#!/usr/local/bin/php 【Next-Zero】『カメアシ興行紀』(/2003年8月)
 
 


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〜カメアシ興行紀〜

2003年04月 05月 06月 07月 08月 09月 10月 11月 12月  2004年01月 ・・・>>一覧 

■2003年08月01日(金)  今日もいい試合でした。
 決勝戦。
 たった一枚しかない甲子園出場の切符を掛け、熱闘が繰り広げられました。
 今日は、最高の決勝戦日和。昼食時のカメラ番をしているだけでも汗が流れます。
 そして、今日も私は放送席カメラ。
 今日は結構積極的に放送席カメラの画を使ってもらうことが出来て、満足でした。
 放送席の顔出しは五回裏が終わり、CMが明けたところで一回あっただけでしたが、そのほかの時間は放送席の窓越しに見えるスコアボードを抜いておきます。
 今日は比較的風があったこともあり、スコアボード上の日の丸と大会旗がはためいている画を押さえておいて、その映像をCM明けなどに何度が使ってもらえました。

 九回の表に私は放送席を離れ、今度はインタビューカメラのケーブル裁き要員として、ベンチ横通路へ向かいました。
 そして、試合終了。
 カメラマンがグラウンドに飛び出し、キャプテンと監督のインタビュー、そして表彰式を収めます。
 間近で見る、優勝した高校の選手達の感動の笑顔。惜しくも甲子園への切符を手に入れられなかった選手達の惜敗の涙。
 いずれも、心に焼き付けられます。

 そして、撤収。
 私は、自分の使った放送席カメラとインタビューで使われたカメラを片づけ、あとは中継車周りのケーブルや小物を機材車に積み込んでいきます。
 今日は私以外にもカメアシさんが三人もいましたので、結構楽に撤収できました。

 さて、いよいよ本大会が近づいてきました。
 応援実況カメラは、「逃げ」の画ではなく、試合経過と織り交ぜて使われる位置づけだと営業の方からも教えていただき、今から期待と不安でいっぱいです。

 明日は、またENGのカメアシです。

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■2003年08月02日(土)  少年時代から野球とはあまり縁がありませんでしたなぁ。
 プロ野球…高校野球、少年野球……こうも社会人になってから野球尽くしになるとは思ってませんでした。野球好きなら最高の環境なんでしょうけど…。

 というわけで、本日はENGのカメアシです。
 今回のENGもCM撮影。
 某外資系の大手飲料メーカのCMで、野球少年達がその商品をおいしそうに飲む…というシチュエーション。
 ただ、今回の撮影はCMのために人を集めたのではなく、集まった所を利用して撮影するという形式。
 詳しいことは判りませんが、どうも今大阪で全国の各都道府県から選ばれた(勝ち抜いた)少年野球チームが全国大会か何かをしているようで、その大会を利用しての撮影です。
 CMは実際の試合の模様をカメラで収め、そして試合と試合の間の10分ほどの時間を利用して、直前まで試合をやっていたチームの少年達10名ほどを集め、商品を飲んでもらいます。
 これを四回繰り返しました(本日は試合が全四試合あったため)

 カメラはDVW-700A x2 とDVW-790A x1 …つまりデジベタ収録です。
 私はネット裏の2カメに付いて、移動するカメラのケーブルやらなにやらを捌きます。
 仕事そのものは大変なことはなかったのですが、とにかく暑いのなんの…。
 腕には汗があふれ出し、もはや両生類状態(笑
 さらに、試合を撮り、試合が終われば「飲み」を撮影する……という繰り返しですからインターバルが無く、トイレに行く時間ももちろん昼食を食べる時間もありません。
 カメラマンはカメラの横に昼食のカレーを置いて、イニング間や、タイムの時などにちょっとずつ食べて居られましたが、私は幸いにもそのカメラマンの采配で他のアシスタントさんと交代出来ましたので5分ほど時間をもらって、落ち着いて(?)昼食を食べました。

 結局、今日の撮影だけでは満足のいく映像が揃わなかったため、明日も同じく撮影に行きます。

 そういえば昨夜、以前のENGで収録したCMがオンエアされているのをたまたまテレビを点けたとき時に見てしまいました。
 確かにあのとき、フロアモニタに映し出されていた映像が編集・構成され、一つのCMになっていました。
 そのCMは以前も書いたとおり関西地域(かつ放送局)限定ですが、今回のCMはおそらく全国で見られると思います。
 少年野球+外資系飲料メーカ。この組み合わせのCMを見かければ、それが今回制作しているCMです☆

 
030802.jpg 550×200 38K

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■2003年08月03日(日)  花火。
 今日も昨日に引き続き、ENGによるCM撮影でした。
 今日の撮影は、昨日の未収録分の撮影だけでしたので、早く仕事が終わります。
 朝の7時に会社に集合して、8時前に現場入り。昼過ぎには撮影終了です。
 帰社して、機材を片づけ終わって15時前。
 今日の仕事はそれで終わりでした。

 さて、今日は「第15回平成淀川花火大会」
 >>>http://www.yodohanabi.com/
 実は、私の住んでいるマンションはこの花火大会を観賞するには最高の立地にあるらしく、かつ最上階に私は住んでいますので、部屋から間近に花火を見ることが適います。
 先日、大学時代の後輩で大阪に住んでいる者から「花火を見ませんか?」という連絡があり、「では、私の部屋に来ますか?」と提案しておりましたので、折角仕事も早く終わったということで、部屋まで大学の同期や後輩達が遊びに来てくれました。
 コンビニで晩ご飯と酒とつまみを買い込み、まずはマンションの屋上へ。
 以前からの住民達は流石にこのロケーションを知っていますので、すでに場所取り用の茣蓙が敷いてあったりします(笑
 我々も適当な所を陣取り、まずは花火観賞。
 そして、部屋に戻って、ベランダにレジャーシートを敷いて、お酒片手に晩ご飯を食べ、花火を愛でます。
 大阪でも2位3位を競う花火大会ですので、大変に綺麗で豪勢な花火を見ることが出来ました。

 そして、また久々に大学時代の友人達と会えて談笑できましたので、大変に楽しかったですね。

 さて、明日からいよいよ甲子園での高校野球のセッティングに就きます。
 怒濤の夏が始まります!!
030803.jpg 550×413 43K

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■2003年08月04日(月)  I'm sorry to be late.
 今日は遂に「遅刻」をしてしまいました。
 それも2時間遅刻!
 が、決して寝坊や交通事情などによるものではありません。
 どちらかというと「確信犯」です。

 昨日はENGの仕事が終了後、デスクへ戻り、明日のシフトを確認して帰宅したのですが、その時確かに私が見たシフト表には「集合“9:30”」と記載されていました。
 ただ、少々ややこしかったのは、今日は私は2つの仕事に就いていたと言うこと。
 両方とも甲子園が現場なのですが、片方はプロ野球中継のケーブル撤収、もう一つは高校野球の中継車入り+セッティングというもので、集合時刻が書かれていたのは前者のケーブル撤収のみ。
 ですから、私は「ケーブル撤収が終わったら、私だけがセッティングの方へ流れれば良いんだな。だから集合時刻が書かれていないのか。ということで、9:30に会社」と手帳にメモして帰宅しました。

 そして、本日出勤。
 デスクにあがり、シフト表を改めて確認すると………
 <中継車+セッティング:7:30集合>
 ………。
 ……………。
 今は9:30……もはや、どうしようもありません。
 しかし、直ちにはどうしてこのような把握と現実の齟齬が生じたのか理解出来ません。とにかく焦燥です。
 なぜなら、昨日見たシフト表にはセッティングの集合時間が明記されていなかったのに、今日見れば記載があります。であれば、「このシフト表は更新された最新版なのか?」と思い更新日付を確認しましたが、“7月31日”と書かれています。
 さっぱりです。
 セッティングの集合時間を見落とした…などということは絶対にあり得ません。
 昨日、セッティングの集合時間が空欄だった事を確認しているのですから。
 となれば、私が昨日見たシフト表は「古かった」ということになります。
 中継部のシフト表は「コピー厳禁」「未決定」「第一決定稿」「第二決定稿」....とあり、コピー厳禁は未決定稿の草案、未決定は第一決定稿に近いもの、第二決定稿は第一決定稿が提示している週の中で変更が生じている場合に作られるもの……以降、変更がある度にシフトは更新されます。
 私が今朝確認したシフト表は第一決定稿でしたので、可能性としては昨日見ていたのは「未決定稿」という可能性があります。
 では、なぜ31日に発行されているはずの第一決定稿ではなく、それ以前の未決定稿を見てしまっていたのでしょうか?
 考えられるのは推測の域を出ませんが、誰かが第一決定稿を「自分用にコピー」して、そのままシフト表ファイルに返していなかった可能性です。
 シフト表ファイルは、その週の新しいシフトが出るたびに、古いシフト表の上に新しいプリントが収められます。この場合、第一決定稿の下には未決定稿が収められていますので、それを私が見てしまった可能性があります。
 確かに、思い起こせば、他の仕事の欄も本来書かれているはずの集合時間があまり書かれていなかったような気もします…。

 とにかく真相は謎ですが、私が2時間遅刻した……というのは覆しがたい厳然たる事実です。
 急いで、中継機材庫に行くとケーブル撤収チームのリーダーすでに居られ、その方が、「お前、今日は先にセッティングの方へ行かないとあかんかったんやぞ」と言われ、私の頭にあったシフト表は決定的に間違っていたことが判明しました。
 そして「Aさん(セッティングチームのリーダ)から連絡があって、お前がこっち(撤収チーム)の方へ行くだろう…と言ってきているから、とにかくお前は撤収作業を先にやって、終わったらセッティングチームへ流れろ」と言われました。

 そして、甲子園へ…。
 到着すると、近くにセッティングチームのリーダーがいらっしゃったので、すぐに謝罪に行きます。
 「朝、大変だったから、お前に居てほしかったなぁ〜」と言われてしまい、深く反省です。
 素直に謝り、シフト表がどうだったとか、私が遅刻してしまった言い訳などは一切いたしません。
 その後は、一生懸命セッティング。
 今日は、一通り回線チェックを行うところまでやりました。

 とにかく、反省としては「シフト表の更新日付は必ず確認しておく」「ややこしいシフトが組まれている場合は、両方のチームリーダに連絡を取っておく」という事です。

 明日も残りのセッティング。
 明日は8:45集合。これは、間違い有りません!

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■2003年08月05日(火)  俺たちの……暑い夏がやって来た。
 今日はセッティング最終日。
 明日からは、いよいよリハーサルが始まります。
 
 今日は、昨日の作業の残りを少々行うだけでしたので、作業時間よりもむしろ待機時間の方が長くて、日陰を探して他のカメアシさん達と一緒に、休憩します。

 ところで、中継の仕事では大抵、飲み物が用意されていますので、基本的には飲み放題。 今日も、冷蔵庫の中で冷えたペットボトルのお茶やミネラルウォータを数本いただきました。
 また、今日からは「食券」が配布され、それが利用できる様になりましたので、甲子園球場横の軽食屋で昼ご飯が無料で食べられます。
 中継の仕事でありがたいなぁ〜と思ったことは、ロケ弁を始め、食事や飲料がただで済ませられる……という事でしょうか(笑
 その分、給料が安いのかもしれませんが…。

 夕方16時からは、開会式の打ち合わせです。
 台本がディレクターから配布され、各シーンの説明が行われました。
 実は、私自身は開会式ではカメラを振ることは無いので直接は開会式に関係ないのですが、こういう技術打ち合わせ(技打ち)に出席して、場になれておく事も必要です。
 実際、今日もらった台本の中にもいくつか意味がわからない記号や略語があったので近くに居られた先輩に質問しながら、技打ちを聞いていました。

 なお、私のカメラマンデビューの日が確定しました。
 8月8日の第三試合です。
 それまでは、研修という形で、オンエアーに乗らない形でカメラの練習をすることになると思います。
 なお、私は今回「応援実況」というカメラでデビューするという話を書きましたが、私が思っているカメラとは少々違う役割を果たすようです。
 私が思っていたのは、応援席にハンディーカメラを担いで立って、リポーターの話にあわせて応援席を撮すものだと思っていましたが、そうではありません。
 応援実況カメラには2つあり「応援席を撮す」のと「放送席を撮す」ものがあります。
 そして、応援席も放送席も、全国ネットの映像とは別に、ローカル局用の画を撮るためのものとなります。
  各地方局からは、高校の出場にあわせて、リポーターが派遣され、全国ネット版とは別の画が送られます。
 どういう事かと言いますと、たとえば九州の某県代表校が出る試合ならば、全国ネットに流れる映像とは別に、その地方局のみに流される映像が有ります。
 それは、現場の中継車で切り替えられるのですが、今の例の場合なら九州と九州以外の全国に流れる画が、違う場合があるのです。
 その画を撮るためのカメラが私の今回の仕事で、むしろ大阪在住の方よりも地方にお住まいの方の方が私の画を見る可能性が高いと言えます。
 まだ具体的な撮影内容は聞いて居らず、明日から研修となりますので、そこで明らかになっていくと思います。

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■2003年08月06日(水)  現場はピリピリしています。
 嵐の前の静けさとでも言いましょうか、今日は短い一日でした。
 本日の出勤時間は13時に現場…すなわち甲子園です。
 今日は、開会式のリハーサルなどがあったのですが、応援実況の私は関係有りませんのでお昼からの現場入りで良かったのです。
 そして、今日の仕事内容は、簡単に応援実況がどういった画を撮るのか……という説明があり、放送席の前で実際にカメラを振って、雰囲気を確認しました。
 しかし、それも30分程度の話。
 カメラを振ったのも、私のためと言うよりは音声部がリップシンクを確認するためであり、それが終わればOKが出て、応援実況放送席のカメラは撤収となりました。
 そして、しばらく本部で時間を潰し、TDさんが来られてから、具体的な明日のQシートの打ち合わせを行いました。
 応援実況のオンエア編成はややこしく、各地方局の番組編成に左右される部分が有ります。
 そのため、ネット(全国ネット映像)との映像の差し替えのタイミングや音声などが大変に複雑で、また、当然試合時間が押せば、後に控えている試合での地方局の編成に被ってくるので、画作りには細心の注意が必要となるそうです。
 
 私はこれが初めてですので打ち合わせ終了後、直接TDさんから細かな説明を受け、いろいろとアドバイスをいただきました。
 
 以上が、終わって16時半。
 ネット系の方々の仕事はまだ終わっていませんが、応援実況とネット系の仕事は事実上「別番組」として扱われますので、これにて私たちの仕事は終了です。
 14時間以上働く日もあれば、4時間も働かない日もある……それが中継のお仕事の様です。

 明日は、いよいよ開会式と試合初日。
 やっぱり、開会式は私には関係ないので、第一試合に間に合うような出勤時間となります。

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■2003年08月07日(木)  台風が接近していますよ〜。
 いよいよ、高校野球本大会が始まりました。
 まずは、開会式。
 とは言っても、私には関係のない仕事ですので、サブ(副調整室)のモニター越しに式の様子を見守ります。
 やはりおもしろいのは、テレビでオンエアされている以外にもいろんなカメラの映像が見られるということでしょうか。
 小泉首相の挨拶にしても選手宣誓にしても、同時に違う角度から見られ、「こういう画も作れるなぁ〜」などと考えながら、モニタを見つめていました。

 さて、試合が始まりますが、今日はまだ私がカメラを振ることはありません。
 サブで先輩カメラマン達が作る画や番組の流れを把握するための研修日です。
 応援実況は基本的には本線の映像を流しているのですが、解説などはローカル局のものを使い、本線が解説者の顔出しなどしているときは、球場内の画でつぶしたり、逆にローカル局の顔出しを作ったりとQシート的には結構ややこしいのです。
 さらに、次の試合を担当するローカル局が控えている場合、たとえば前の試合がおせば、後ろの局のオンエア時間に被ってしまうために、画も解説者もいろいろとそのあたりの事情を配慮する必要があります。
 基本的にはTDさんの指示で画を作れば、問題ないのですが、現場があわただしいことに変わりはありません。

 今日は3試合の応援実況を見学し、勉強しました。
 そして、遂に明日が私のカメラマンデビューなのですが……どうも台風が来るお陰で、試合と共に延期になる可能性が大です。
 まぁ、鋭気を養っておきましょう。

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■2003年08月08日(金)  台風が来る!…となると、色々な意味でワクワクします。
 台風の接近がこれほどに気になるのは小学校の時の遠足や運動会以来のような気がします。
 なぜなら今日は、私のカメラマンデビューの日なのです。
 朝の5時に起床して、テレビを点け、台風情報と今日の試合予定についての情報を集めます。
 昨日、試合終了後の打ち合わせで、台風時の出勤についての説明があり、試合の中止が決定していれば、デスク勤務か、あるいは会社休として扱ってもらい休む……となっていました。
 しかしながら、私が部屋を出る時刻までには今日の試合予定が判らなかったので、しかたなく6時半に部屋を出ます。
 7時半前に甲子園球場に到着すると、駅前には
 「本日の試合は、台風の影響のため第三・第四試合は順延となりました」
 という張り紙がされています。
 ……第三試合…といえば私のデビュー戦だったのですが…野球とともにこちらも順延となりました。
 
 さて、第一試合が始まります。
 しかし、朝早かったのと最近眼鏡からコンタクトレンズに変えた事もあって、目が乾き易く、すぐに瞼が重くなって、度々一瞬ずつ眠ってしまいます。
 その瞬間をTDさんに見つかってしまい、透かさず叱られてしまいました。
 もう、それからは目がパッチリ、頭はっきりです。
 明日からは、頭を醒ますためにも朝シャワーを浴びてから出勤します!

 第一試合は、何とか天気も保ち無事に終了しましたが、第二試合は頭から早速台風の運んできた雨が大降りとなります。
 急いで雨合羽を着込んで、カメラに雨カバーを持っていったりするなど、俄に現場は忙しくなりました。
 4回裏(11:56)、一旦試合は中断となります。
 そして、待つこと30分。
 その間、放送ではテロップで「ただいま、雨のため試合を一時中断しています」というお断りが出ています。
 そして、その場合バックの画を現場のカメラマン達が作らねばなりません。
 「雨の球場」を表現するありとあらゆる画が、その場で撮られます。
 複数台カメラが有るとは言え、それぞれのカメラは三脚から動くことが出来ませんので30分近くもその場から画を探さねばならないのですから、見ているだけでも大変です。
 しかし、こういう時こそ「センス」が試されるのだろうな……と考えさせられます。
 そして、12:21……ノーゲームが宣言され、試合は明日にやり直しとなりました。
 同様に私のデビュー戦となる広陵vs東海大甲府も明日の試合となりました。
 さてはて、明日の天気は…試合は……そして私のデビュー戦はどうなるのでしょうか…。

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■2003年08月09日(土)  Debut
 カメラマンデビュー!です。

 今日の甲子園では午後からの2試合のみでしたが、昨日が台風襲来…ということもあり、昨日の試合終了後、カメラを一旦撤収していました。
 ですので、今日はその組み立てを行わねばならず、またカメラチェックも必要でしたので、朝10時に現場入りです。
 今回、勝者インタビューや遠隔操作カメラなどを除いても、全部で13カメが一つの試合に動いています。
 さらに、私が担当してする応援実況カメラを入れると15台。
 さらにさらに、そのインタビューカメラや遠隔操作(銀傘カメラという)、砂取りカメラ(敗者チームが甲子園の砂を持ち帰るシーンを撮すワイヤレスカメラ)などが他にもあり、日頃のプロ野球以上に大がかりなシステムが組まれています。
 
 さて、カメラのチェックが終われば、まだ時間がありましたからカメラの練習をします。
 ペデスタルに固定されたカメラ位置から、どんな画が作れるのかを探し、画のレパートリーを増やしておく……というよりは私の場合蓄えておく必要があります。
 銀傘越しの雲、照明のアップ、スコアボード、応援席、応援旗、ベンチ………肉眼で探し、ファインダーをのぞき込んでズームインし、パニングして……と画を探していきます。

 そして、第一試合がプレーボール。
 私は、まずは今日もサブで先輩カメラマンの画をモニタ越しに勉強します。
 そして、試合終了…。
 
 第二試合へ甲子園球場は移行します。
 いよいよ、私のカメラデビューです。
 冒頭からの早速、アナウンサとゲストの顔出し。ペデスタルを被写体の目線まで上げ、ツーショットを作り、テロップの乗る空間を空け、オンエアに乗る時を待ちます。
 インカム越しに聞こえてくるカウントダウン。
 「10秒前、8、7、6、5秒前、3、2、1、ハイ乗った」
 まずは、もう一台の応援実況カメラが球場のグラウンドから放送席に向かってパンズームイン。そして、O.Lで私のカメラに移ります。
 ファインダー内のタリーが静かに点ります。
 私のカメラを意識してしゃべり始めるアナウンサとゲスト。
 リターンには確かに私の画が乗っています。
 そして15秒ほどして、もう一台のカメラに画が逃げます。
 すると、すかさず私は、カメラを放送席から180度反対のグラウンドの方へ振り、画を作り、スイッチングを待ちます。
 そして、スイッチングされて、やがて本線(今回はG-SUB)の映像に切り替わり、とりあえず一旦これで仕事が終了します。

 私のデビュー映像第一弾は、まずは無難に…問題を起こそうにも起こせない様な内容ですので、無事に送り出す事が出来ました。
 そして、ここからカメラマンの画作りが求められる仕事が本格的に始まります。
 まずはCM空けの時の映像です。
 ネットのCM尺と地方局のCM尺は5秒違うということがあり(ネットの方が5秒長い)、我々応援実況カメラは、その「5秒+本線に乗るまでの時間」を埋めるための画を作ります。
 多くは銀傘ナメの空からのパンダウンとか、応援席からのパンやズームアウトで、そういったパターン化された画から、特徴的なものを作っていく必要があります。

 5回裏が終わると、再び顔出しがあり、5回裏2アウトのあたりで、急いでペデスタルを上げ、カメラをグラウンドから放送席の方へ180度反転させ、2ショットを作って、その時を待ちます。
 
 その後は、CM空けの画を毎CMごとに作り、試合中は私は画作りの練習をします。
 今日の第二試合に乗ってきた地方局さんは試合の途中で降りる(オンエアが終了する)番組編成だったために、私の仕事は一応その時点をもって終わったのですが、その後、今度は、ニュース送り用の素材を撮るために試合終了までカメラを振ります。
 要領が判ってくると、たとえば撮すべきチームが「守備」時で、かつピッチャーが好投を見せており、打者を三振に討ち取る瞬間などは応援席が沸きますので、2ストライクまで取ったら、応援席の方にレンズを向けておくと、三振が決まった瞬間にスイッチングしてもらえたりする画を作っておくことが出来ます。

 そして試合終了。
 私のデビュー戦初日は、ひとまず終了です。
 カメラを片づけ、応援実況控え室に戻って、「お疲れ様でした〜」の挨拶。
 その後は、SWさんの元へ行って、今日の私のカメラの反省点を伺いました。
 「ピントが甘いときがある」「何を中心に撮りたいのか判らない画がある」「一枚の画だけでスイッチングを済ませたいので、それだけで意味の判る画になっているものを撮れ」などなど。
 当然ですが、やはり「画作り」は難しいです…。もちろん、画作りが簡単に出来ればプロのカメラマンなど不必要なわけですから、難しいのは当たり前。これから毎日修行の日々です。
 今までも、中継の仕事に出てカメラが空いているときは練習をしていましたが、本番というのはそれとは一線を画します。
 一連のスイッチングの流れの中で、他のカメラの画をリターンで確認し、解説者のしゃべりを聞いて、また刻一刻と目の前でリアルに変化する状況をくみ取って、かつ見栄えのする画を作る……なるほどプロの仕事です。
 今、漸くその一歩を踏み出した私には、それぞれその一つ一つを確認するだけ…把握するだけで精一杯。
 毎日の自分の仕事を一つ一つ反省して、明日につなげていくしか前進の道はありません。

 これから暫く、焦りと困惑と、しかし楽しさの中でカメラマンとしての修行を行っていくこととなりそうです。

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■2003年08月10日(日)  試合の流れを理解するのは難しいですわ……。
 今日ももちろん応援実況カメラの仕事です。
 今日は第一試合と第三試合に応援実況が入りますので、朝7時半に甲子園集合です。
 本日の私の担当は、昨日の放送席前のカメラではなく、貴賓席の隣にあるカメラです。(ちなみに、応援実況においては放送席前が1カメで、貴賓席隣が2カメです)
 貴賓席は一塁側ベンチの上の方にあり、その場所からは三塁側ベンチと応戦席がよく抜け(撮せ)ます。
 2カメはデカカメですので、昨日の1カメ(こちらはハンディカメラヘッド)と違い、ズームやフォーカスは“押し引き(ズームシャフト)”で、ビューファーはカラー。
 2カメの仕事は、放送席顔出しの時にスコアボードのあたりから左へゆっくりとパンをして、バックネット裏の放送席付近まで振り、そこから「おもむろに」放送席付近にズームインしていくのが専属的な仕事で、あとは1カメと同様、CM空け時の入り画を作ったり、本線とは別の画を用意する必要があるときに画を探したりします。

 さてさて、今日は第一試合からいきなりトチってしまいました。
 上述の放送席顔出しの時のパニング→ズームインですが、パニングは比較的スムーズに行ったのですが、ズームインが出来なかったのです。
 練習時には何度もうまく出来ていたのですが、本番の緊張の所為でしょうか、ズームシャフトを押し込めません。
 いや、本人は押し込んでいるつもりだったのですが、画は動いていないのです。
 ズームシャフトには、ある程度スムーズにズーム操作をするために、その動きに重みがあります。
 そのため、うまくズームイン時やアウト時に力を入れないと「ガックっ」とした動きからズームが始まってしまう事があります。
 実は、それを恐れて初動時にうまく力が入れられていなかったのです。
 すかさずスイッチャーさんからは「もう2カメそれで良い!! ホールドっ(固定)! 練習の時だけ巧く出来ててもしゃーないやろ!!」と叱られます。
 その後は、何度か顔出しのシークエンスが有りましたが、そちらはこの反省を活かして、失敗することなく行うことが出来ました。

 今日の仕事の中で一番厄介だったのが、第三試合終了後、担当地方局が降りる(番組を終える)までの「潰しの画」を作ることでした。
 通常は本線をもらっている地方局ですが、降りる時間はネットと違いますので、本線の画で降りたりすると中途半端になったり、またヒーローインタビューの場合、相手チームが勝者であると、地元放送局としてはそれを流す意味がありませんので、バッサリとカットして応援実況のカメラで画を作らなければなりません。
 今回の試合終了後の画潰しは『9分』
 2台のカメラだけでその9分をつなぐ必要があります。
 すでに、グラウンドには選手は居らず、敗北したチームがベンチ前で、砂をかき集め泣いている……という光景だけが有ります。
 もちろんそれは感動的な場面ですが、それだけで9分は作れませんので、いろいろと必要な画を探します。
 もちろん、砂取りの画を使う時間は結構長く、また画にもなりますので、2台のカメラで寄りと引きの画を使い分けて、選手を押さえます。
 途中、「2カメ、ピッチャーにつけておいて」と言われて、ベンチ前の集団の中からピッチャーを捜し、フォローしていましたが、ちょっと目測を誤った瞬間にピッチャーを見失ってしまいました。
 ……これはもう大変です。
 皆同じ服装。毬栗頭。加えて試合中は帽子を深々と被っていますので、試合終了後に帽子を取ってもらっても、誰が誰か判りません…。また、背番号を覚えていても、それは背中にしか付いていないので、対面すると手がかりも有りません。
 ファインダーと肉眼と、1カメが撮している画をリターンで確認して、あわててピッチャーを捜します。
 無事に、見つけることが出来ましたが、流石にロストしてしまったことについては叱られてしまいました。
 明日からは、「こういう場合(長時間の画潰しで特定の選手をフォローすること)もある」ということを理解して、気をつけなければなりません。

 私の失敗は、何の修正も無く瞬時に電波に乗って視聴者の元に届けられてしまいます。
 そして、その失敗について上司や他のカメラマンに対して詫びることは出来ても、視聴者にはそれは通用しません。
 ましてや、私がカメラデビューして2日目などという事など関係ないのです。
 ですから、スイッチャーさんに理不尽だと思われる事を言われても、それは極々当たり前で最低限の注文である訳で、実際に実行できねばならないのです。

 幸いなことに、私はこの甲子園が終わるまで毎日応援実況カメラに就いています。(逆に言うと、終わるまで休暇が無い…ということですが)
 これ程に長い間、同じ仕事に就けるということは中継の仕事の中では、そうそうありません。
 この機会を大切に、毎日特訓です。

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■2003年08月11日(月)  世界に一つだけの画角。
 今日も悩める若者…となっています(悩

 応援実況カメラの仕事は、試合開始時とCM空け時と5回裏終わりの顔出し、そして地方局が降りる時に画を作る……と、試合自体を撮っているカメラと比べれば非常に楽な仕事です。(実際、試合についている先輩カメラマンからは「何、楽なカメラしてんねん」と冗談に言われますが)
 ですから、試合中は自由にカメラの練習が出来ます。
 これは、なかなか無いチャンスです。先日も書きましたが、連続して長期間同じカメラに就ける…という事も珍しいのですが、練習時間がこれほどにある事も中継では珍しいのです。
 
 無論、この機会を逃すべくは有りませんので、私も試合中(自分のカメラの出番以外)は練習をひたすらしています。
 しかし…この練習内容が今回の悩みです。
 まず、初日の練習ですが、個人的には選手の動きなどを撮りたかったのですが、やはりここは出しゃばらず、今回本番で使ってもらえる画の練習を一生懸命しておいた方が良いだろう…と思い、“甲子園”というイメージの画を作ることを中心に練習をしていました。
 2日目は、はじめそのような練習をしていましたが、スイッチャーさんに「選手の寄りを撮って、FFやフォローの練習をしておけ。折角(試合カメラの)3カメと同じような位置に居るんだから、こんな機会は無いだろう? (CM)空けの画なんて、普段は目で見ておいて、直前に作れるだろう」と言われてしまいました。
 ですので、ピッチャーの寄り画や、右バッターのFFやバストアップの画を撮る練習をしていました。
 選手の画を撮る練習をしても良いと言われたので、喜んでやっていましたが、球フォローの練習は、流石に出しゃばりすぎだろう…と思い、この日は控えました。
 そして本日3日目。昨日すでに選手を撮る練習はOKと判っていましたから、しばらく選手の寄りやフォロー画を練習していました。するとスイッチャーさんに「そのバッターの画からもう少し引いて…そして、そのままピッチャーに持っていってみろ。その画で、球フォローの練習をしてみろ。」と言われました。
 これは願ってもいない、許可です。
 早速、ピッチャーが投げる球をキャッチャーが捕るまではフォローします。
 まぁ、流石になかなかうまくいかず、球に追いつけなかったり、バッターボックスでカメラを止められなかったり……と正真正銘、初心者丸出しの画を撮っていましたが、徐々にコツが判ってきて、撮るときの足の開き方、腰の使い方、体の位置、フリクションの堅さ、パン棒の位置……など自分にあった姿勢が判ってきました。
 まだ球速が速いとフォローできない場合がありありますが、120km/h前後の球はほぼフォローできるようになりました。(130q/h近くなると失敗が多くなります…)
 ちなみに、バッターボックスと打者が画面に巧く収まるサイズのままで、ピッチャーにそのまま持っていくと、大分空白が出ます。これは見ていて気持ち悪いのですが、初心者の私が球フォローをするには、これぐらいの余白がないと難しいのは確かです。
 おそらく、スイッチャさんはバッターで画が決まる様なサイズを覚えさせて、球フォロー練習をさせようと考えられたのでしょう。

 今日はこんな練習を始終しており、大変に充実した練習が出来たのですが、若者が悩むのはその後です。
 自分の仕事が終わり、本部へ帰ります。
 すると、すでに次の試合の担当スイッチャさんが卓についておられました。
 そして、そこで言われたのが、「お前の画はFFがFFになってない。球フォローの練習をずっとしていたみたいやけど、そんなんよりも、人間をちゃんと撮る練習をしろ。(今、球フォローの練習をするなんて)練習の仕方が間違ってる」と叱られてしまいました。
 さて……こういうとき私はどうしたらいいのでしょうか…。
 このときは流石に面食らってしまったので(←仕事の方は比較的今日は巧く言っていたこともあり)、「すみません」としか言えませんでした。
 しかし、次の瞬間には、正当な理由を言うべきかどうか迷っていました。
 「いいえ、○○さん(自分の時のスイッチャーさん)が球フォローの練習をしろとおっしゃったのでやっていました」…という弁明です。
 ですが、言えません。
 このときはまだ「お前の画はFFがFFになってない。人間をちゃんと撮る練習をしろ」とおっしゃったことが頭に強烈に残っており、確かにその通りだ……と思ってしまったので、下手な言い訳はやめておくべきだ……と判断したのです。(特にアンダースキャンで映っているファインダーの画でサイズを決めると、人物の頭が切れていたり、天詰まりになっている事が実際多いので…)
 しかし、ちょっと冷静になって考えてみると、上記のようにおっしゃったスイッチャさんが私の画を見て居られたのは、私が球フォローの練習を始めてから……という事になりますので、そのときに私が人物を撮っている…といえば、投げる前のピッチャーの画しかありません。
 すると、確かに中途半端な引き画で、見ていて気持ち悪いのは当然です。
 結局私は大変に理不尽なお叱りを受けたのではないか……という気がしてならないのです。
 
 私は入社以来、まず以て「弁明」をしたことはありません。
 弁明とはすなわち言い開きのことであり、つまりは言い訳…。 
 たとえそこに真実を含んでいるとしても、言い訳と受け取られた時点で、良くは思ってもらえないでしょう。
 無論、反対に弁明をした方が「謂われのない叱責」から自分の権利を守る事になる…とも思いますが、しかし今度は自分の矜持が弁明をすることに耐えられないのです。
 今は耐え、いずれ弁明の必要がない程に成長した方が、よほど自分の矜持を満たすのではないかと感じるのです。
 
 青臭い精神論は置いておいて、しかし明日から私はどの項目を練習すればいいのでしょうか。
 人のサイズの練習ばかりしていれば球フォローをしろといわれますし、球フォローをすれば人のサイズを勉強しろ…といわれます。
 もちろん、バランス良く練習すればいいのは当然ですが、解決策としては、ピッチャーのバランスの良いFFから、球フォローをして、その過程でズームバックをかけながら、バッターをFFで捉え直す……という練習でしょうか…。
 でもこれでは、結局は高度な練習を要求されているような気がします…。

 実は、昨日も今日も、毎日スイッチャーさんが違う人なのです。
 そこにきて、さらに第三者からの助言もあります。
 ですから、おっしゃることも皆それぞれに微妙に違います。
 感性の世界の話ですから、どれか一つが正解という訳ではない世界です。
 巧く自分が汲み取って、咀嚼し、吸収していくしかない……ということは理解はしているつもりなのですが……。
 己の処世術の成長も必要ですね。

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■2003年08月12日(火)  結局、球フォロー
 昨日は凹み気味の日記を書いてしまい、そんな甘ちゃんな若造に叱咤のメールでも来るかと覚悟していましたが、反対に、業界の先達から励ましのメールをいただいてしまって、恐縮と感動です。
 ありがとうございます。

 さて、今日ももちろん「応援実況」です。
 第1試合と第3試合担当だったので、朝7:30に甲子園球場集合でしたが、前日に「ペデスタルのポンプの空気が抜けている」という話を聞いていましたので、ちょっと早めに現場に入って、ポンプに空気を入れておこうと思い、6:50には甲子園に着いていました。
 ちなみに、上記の説明を念のためしておくと、ペデスタルというのはもちろんカメラペデスタルのことで、重量のあるカメラをアングル的に上げ下げするための装置のこと。
 スタジオカメラなどの大重量対応のものはどうか知りませんが、今回ペデスタルに乗せているのはBVP-750というハンディーカメラなので圧縮空気を使って上げ下げできるタイプを使っています。
  Ex)http://www.libec.co.jp/jp/pedestal/main.html(実際に使用しているものとは違います)
 イメージ的には、座部の上げ下げ可能なオフィスチェアーの仕組みをイメージしてください。
 ……で、この圧縮空気式のペデスタル(通称:ポンプドリー)の空気が一日たつと抜けてしまうらしく、毎朝使用前に空気を入れる必要があるようなのです…。
 入れ方は簡単☆
 自転車のタイヤに空気を入れる方式で、シャフト部を上下させて空気を入れるのです(汗)

 さて、空気が入れば打ち合わせです。
 第1試合のQシートを手に、今日の番組構成を何となく頭に入れます。
 そして、それが終わればカメラチェック。カメラチェックは必ず毎日行い、タリー、リターン、インカムが正常に働くか確認します。レンズバックを合わせるのも忘れてはなりません。
 
 今日の私の担当は1カメ。つまり放送席カメラです。
 今日の応援実況の放送席は、地方局2局が入っていましたので、結構厄介です。
 どういうことか、面倒ですが説明します。仕事自体も面倒でややこしいのですが…。

 まず、地方局A局とB局が乗っているとします。
 映像としては、試合そのものは全国ネットで使われるG-SUBの映像で、そこにCM空けや放送席顔出しの地方局用の映像を私が撮るわけです。
 さて、ここでポイントなのは、応援実況で送り出される映像の回線は「1チャンネル」しかない…ということです。
 つまり、どういう事かというと、A局にもB局にも応援実況が作り出した映像としては、全く同じものが送り出されている…ということです。
 では、具体的に何が面倒なのか説明します。
 最大の問題箇所は「顔出し」です。つまり、放送席一台のカメラで、同時に2局のアナウンサー+解説者の画を収めないといけないのです。
 ちなみに、音声はそれぞれの局に別々に送り出されていて、A局のアナウンサーの声はA局だけに、B局のアナウンサーの声はB局に……となっています。
 ですから、顔出しの時に、A局のアナウンサーと解説者の2ショットを作ると、A局では音声と映像が整合しますが、B局では「音声はB局」で「映像はA局の2人」が映っている……ということになるのです。
 これは、システム上回避できない事です。
 ですから、どう解決しているかといいますと、まず初めに、A局/B局の両方が画面に収まっている4ショットの構図で画を押さえます。
 そして、その際に、各局のアナウンサーがそれぞれに、例えばA局なら「本日の応援実況は、私たちA局の○○と同時に、対戦相手の地元B局のアナウンサーと共にお伝え致します。」
 という感じで放送席の状態を解説してもらいます。
 そして、次にA局を10秒間2ショット、続いてB局を10秒間2ショット……という寄りの画を作ります。
 その際には、たとえばB局を2ショットしていると、「現在、映っておりますのがB局のアナウンサーです」といった旨の事をA局のアナウンサーが喋るわけです。
 そして、最後に再び4ショットに戻し、ある程度それぞれの局のしゃべりが続いたら、2カメが撮しているグラウンドの様子の画に逃げる……という手順です。
 理解して頂けたでしょうか??

 また、このように2局乗っているときに注意しないといけないのは、どちらかのチームに偏った映像を映してはならない…ということです。
 例えば、A局の地元のA学園の選手が、ホームランを打っていたとします。
 本来なら、その選手に寄りたいのですが、ではB高校を応援するために来ているB局はどうしたらいいのでしょうか?
 本線との映像の差し替え時間が長い場合は、両チームを対等に撮して(例えば両ベンチを交互に撮す)、その場を濁すのですが、CM明けなどの1カットぐらいしか差し替えられない場合には、そういった偏った画が撮れません。
 ですから、グラウンドの引きの画や、銀傘+照明……といったイメージ映像を撮るのです。

 今日は、そんなちょっとややこしい1カメを担当しましたが、流石に番組の流れも分かってきて、また試合の流れなども把握できるようになってきましたので、画作りの事で、それほどあれこれとスイッチャさんから言われることはありませんでした。

 なお、昨日の日記に書いた「練習」の話ですが、本日の練習は「ピッチャーのFFからボールフォローして、バッターとバッターボックスのFFまで球をフォロー。さらに、バッターが打ったボールをフォローして、守備が球を捉えたら、その送球もフォローする…」という、まさに「一球を追い続ける」球フォローの練習でした。
 レンズの倍率的に内野選手ですらFFが精一杯でしたから、人物撮りはFFの練習という事になりますが、エクステンダーを入れたりしてウエストあたりまで寄った画などもたまに作って、球を出来るだけ追い込める画作りを心がけました。
 流石に、放送席のあるバックネット裏からですと、ピッチャーの投球は100%フォロー可能でした。
 打ち返された打球も、初めは探すのが大変でしたが、徐々に追えるようになり、またファーストへの送球・返球なども半分ぐらいの確率でフォローできる様になりました。
 やはり、100q/h以上の速度で飛んでいるボールを画面の中央に捉えて、フォローできるようになると、楽しいです。
 ファインダーの中では、ボールは「静止」しているのですから。

 明日は、第一試合と第四試合を応援実況……という最悪な組み合わせです。
 途中の第二・第三試合をどう生き抜くかが課題です。

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■2003年08月13日(水)  もう〜いくつ寝ると…お休みかな〜?♪
 今日は、第一試合と第四試合の応援実況という嫌な組み合わせ。
 第二・第三試合は仕事が無いので、応援実況に就いているスタッフは、それぞれに自由行動でした。
 先輩の中には行きつけの床屋まで散髪に出かけたりした方もいらっしゃいました。

 さて私ですが、この第二・第三試合を利用して練習をすることを決めていましたので、ベテランカメラマンにサブでモニターで見てもらいながら、カメラを振っていました。
 何しろ、実際の試合を気兼ねなく練習材料に出来るのですから、とても貴重な機会です。
 練習を見てもらったカメラマンからは、予め「ワンカメショーをやってみろ」と言われていましたので、今までのようなただ単に球を追うだけでなく、必要な情報を伝えていく…という「構成」の要素を込めた画作りをする練習です。
 しかし…これが難しいのです……。
 まず何よりもカメラの基本的な操作を習得しなければならないのは当然ですが、さらに個人的な課題としては「野球がよく分からない…」という事です。
 基本的なルールは分かりますが、……いやそもそも基本的なルールも分かっていないのかもしれません……。例えば、何がインターフェアなのか、何がボークになるのか、守備位置と背番号には何か関係があるのか? 交代した投手は再び出てくることは出来ないのか……?? などなど、よく分かりません。
 無論、野球のどういう状態が「ドラマ」となるのか分からないのです。(逆転サヨナラ…とかは分かりますが)

 おいおい、そんな奴が野球中継していいのかよ……」と思われるでしょうが、もちろん良くありません。
 ですから、カメラを扱う練習と共に「野球を撮る練習」をする必要が私にはあるのです。
 例えば、出塁者がいる状態で外野フライの打球を外野手が捕球したとします。
 その場合、捕球が困難な打球をファインプレーで捕れば、その野手の送球を追いかけて、タッチアップ後走り出した走者が塁上でアウトかセーフかを確認できるまでフォローした後、ファインプレーを見せた野手へパンします。
 一方、ファインプレーでなく、普通の捕球であれば、送球後野手ではなく、ピッチャーへパンします。
 そういった、守備面で誰が活躍したのか……という判断をする必要があります。 実は、私はあまりピッチャーが守備上で大きな役割を果たしている…と思ってなかったので、捕球しやすい球を「打たせた」ピッチャーを抜く…という感覚があまりありませんでした。
 今日の練習では、そういった事もアドバイスを受けながら、球をフォローし、バッターや守備陣へスイッシュパンして、もちろんピントを合わせる……という練習をしました。
 流石に1試合分の練習をするとめちゃくちゃ疲れました。何しろ、この練習のレベルはとにかく、内容的には他の先輩カメラマン方が試合中……つまり仕事中にやっておられる仕事なのですから。
 野球中継がこれほどしんどいとは思いませんでした。はっきり言って息が上がりました。
 
 実際の試合は、複数のカメラが分担して画を押さえますが、この様にワンカメで試合を見せる努力をすることで、マルチカメラで押さえる場合でも、今このシーンでどのような画を撮るべきか把握しやすくなるのだと思います。

 さて、明日も応援実況。
 まだまだ頑張れます!!(疲

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■2003年08月14日(木)  運動会…「中止」の気分。
 今日はご存じのように高校野球は雨で中止となりました。
 これは朝の段階で分かっていた事でしたので、出勤はせずシフターさんにに連絡を取って、今日は休暇扱いにして良いのか聞いた後、本日は臨時休暇となりました。
 
 さて、久々の休暇です。
 スケジュール表を見て振り返れば、先月の28日を休んだのが最後ですから半月ぶりの休暇です。
 何をして過ごそうか……と考えていましたが、記憶の片隅に「実家のお盆」という行事があったことを思い出し、しかし日にちを明確に覚えていなかったため、実家に電話をして日取りを確認しましたところ、「今日がお盆」ということが分かりましたので、急遽、現在帰郷中です。(ちなみに、この文章は帰郷の電車の中で書いています。……が、実家のネットワークが不調だったため、アップデートは大阪に帰ってからやってます(汗))

 高校野球本大会はこれで二日延期になったわけですが、これは10年ぶりの事だそうです。
 そうなると、我々の仕事も二日順延ということで、シフトもそうですが、機材の利用計画などもややこしくなると思います。これらの事は、まだ私の関知するところではないのですが、今後の慌ただしさが想像されます。

 まぁ、それは置いておいて、今日は久方ぶりの休暇をゆっくりと実家で過ごしたいと思います。

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■2003年08月15日(金)  これ以上順延されると中継車の配備危機が……。
 今日も朝方は雨で試合が中止になるかと思われましたが、高野連の判断はすばらしく、第一試合を11時に順延して、第四試合を取りやめる形式を取ることで、無事に3試合を行うことが出来ました。
 
 朝、出勤前にテレビで今日の高校野球の試合開催状況を確認したところ、6時過ぎの段階で、第四試合はすでに中止が決定していました。
 しかし、外は結構な雨降りで、大阪や京都には大雨警報が出ているような状態です。
 今日も、また中止になるか……と思いながら阪神電鉄・梅田駅に到着。しかし、今日は昨日と違って、「野球中止」の看板は出ていません。
 そのまま、電車に乗って甲子園まで向かいます。
 現場では、皆、高野連の発表待ちの最中。
 中継本部の中では、本日中止の場合の今後の試合スケジュールを勝手に作って、「高野連に渡してこい!」と激しく中止を訴えるカメラマン。カーテンを開けては、空の状態を確認するVEさん。「ほら、激しくなってきた!」とプレハブ小屋の屋根を打つ雨音を聞いて盛り上がるVTRさん………と技術陣は中止賛成投票モード。
 しかし、中止を決めるのはテレビ中継の技術陣でも制作陣でもなく「高野連」。

 8時半前。高野連から11時第一試合開始……の決定事項が発表。
 「やっぱり……」という溜息モードの中、カメラチェックにそれぞれのカメラマンが散っていきます。
 私も、今日自分が担当する応援実況の2カメ(デカカメ)の元へ向かいます。
 今日の応援実況のスイッチャーさんはちょっと私が苦手としている人。
 私が一番多く怒られたカメラマンで、少なくとも私がいるときは虫の居所が悪いのか……と思ってしまうぐらい、ちょっと気むずかしそうで話しかけられません。
 早速、カメラチェックの段階からインカム越しに叱られます。
 あぁ…今日一日も波乱だな…と思いながら、カメラチェックを終え、本部へ戻ります。
 
 このスイッチャーさんは先日の日記で書いた、
「お前の画はFFがFFになってない。球フォローの練習をずっとしていたみたいやけど、そんなんよりも、人間をちゃんと撮る練習をしろ。(今、球フォローの練習をするなんて)練習の仕方が間違ってる」
 の方です。
 ですから、今日の試合中を利用したカメラの練習は、徹底してFF/ウエスト/バストショットで選手をフォロー、という練習をしました。
 しかし、実際この練習は難しいものです。
 まず、スポーツなので対象がチョコチョコと良く動きます。ウエストショットでもピッチャーを捉えるときは、投球の構えから投げる瞬間、投げ終わり…までをフォローするわけで、この生物的な動きをフォローするのは困難です。
 また、高倍率で被写体を捉えているため、被写界深度が浅く、ピッチャーがマウンドの上にいる時と、ちょっとマウンドの斜面途中にいる時ではピントが変わってしまいます。
 今回の練習は、そういった動きの決められたサイズでのフォローとピントあわせです。
 
 ピント合わせは、対象物に寄ってからピントを合わせているのでは遅いので、予め寄る場所の距離を把握して、フォーカスを調整しておきます。これは、ルーズの画の時に行うこともあれば、ズームしながらピントを送っていく事もあります。
 そのためには、まず初めに、一塁側ベンチ/一塁側アルプス、三塁側ベンチ/アルプス、各ベース、ピッチャーマウンド、バックスクリーン、と主要な対象物でのピントの場所を覚え、そして、そのほかの所はそれらのポイントから距離的に遠いか近いかを判断してどちらにピントを送るかを把握します。
 2カメの場合、バッターボックスと一塁ベースでは一塁ベースの方がカメラに近いという状態ですので、ヒットを放ったバッターをフォローする際は、パンフォローしながら、徐々にピントを近くへ持っていきます。そして、そのまま二塁まで回る場合は、ズームを掛けながらフォーカスを奥へ持っていきます。
 こうすると当然常に打者(走者)にフォーカスが合っている状態になります。
 私もこの練習を今日はずっとしていましたが、やはりなかなかうまくいきません。
 何しろ高倍率で捉えているので、フォーカスを送る……といっても、気持ち力を込めたかどうか……という具合のフォーカスダイアル回し加減でピントが変わってしまうのです。
 ですから、ランナーが一塁から二塁に走っていく様子をウエストショットを固定するためにズームをしながらピントを合わせていくと、腕への力の入り方次第でちょっとピンが行き過ぎたりしてしまいます。

 ただ、今日はこうやって各所のピント数値を覚えておいたお陰で、実際に使う画を撮るときでも、対象にズームアップする前にピントは殆ど合っている状態で、若干微調整を行うだけで合焦させる事が出来るようになってきました。(もちろん、まだまだですが…)
 
 帰りの電車で、今日のスイッチャーさんに「私のFFはFFになってきましたでしょうか」と尋ねたところ、「ほんなもん、まだまだや。一日やそこらで出来るようになったら誰でもプロのカメラマンになれるわ」と言われてしまいました。
 FF……フルフレームの画を撮るだけでも、大変に難しいと改めて実感しました。

 あと、やはり、リアルタイムで状況を判断して、構成を考えた画作りをすることが、まだまだ全然出来ていないと反省しました。
 球場の生の状況を感じ取り、またスイッチャーの意図を汲んで、先んじて先んじてカメラを振ることは相当難しいです。

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■2003年08月16日(土)  今日は斬新な画を撮ってしまいました…。
 応援実況の技術スタッフは、試合中継のスタッフと比べると、超ベテラン級人か、反対に私の様に経験が少ない人間が就いていることが多いように思います。
 理由は、二つ。一つには、試合中継と比べれば技術的にはレベルは低いため、新人や比較的カメラ経験の少ない者でも出来る……という若年者向けの理由と、もう一つは、本試合を撮るほどハードな仕事ではない…という年配者向けの理由が存在しているのだと思います。
 また、第三の理由を探せば、本試合の中継に若手ルーキーから30代あたりの成熟者を起用することにより、技術力の継続的な向上を図っているのであると思います。
 
 さて、とにかく応援実況のスタッフ、特にスイッチャーさんはいつも大ベテランばかりですので、新人の私には本当にいろいろなアドバイス(説教+叱咤+講義など)を頂けます。
 これは、大変に有り難い事です。完熟した技術と知識の持ち主から、現場に必要な知識や技術をあれこれ教えてもらえるのですから。
 これは、他の会社に勤めていた方に現場で聞いた話ですが、私の勤める会社では、他の所と比べると、特に「的確なアドバイス」をもらえる事が多いそうです。
 例えば、自分が拙い画を撮っていても「パンナップ、パンナップ! アホっ、引かんでもええ、そのままパンナップっ」とインカム越しに指示を受け、また終わってからも、「あの時は○○だった、このときは◇◇だった、だから、これは流れから言って……とかなり細かく助言があります。
 しかし、他社では極端な場合「あかんっ」と言われて、結局何がダメなのか分からず…自分を伸ばせなかった…という話を聞きました。
  
 今日もその例に漏れず、色々と感嘆するようなアドバイスを多く頂きました。
 特に、「カメラは身体で振れ」というのは納得で、また何故、皆さんが球フォローを見事に行えるのか…など講義を受けることが出来ました。
 
 それにまた、自分の中での悩みや不安が払拭される瞬間があります。
 例えば、今の私はまだまだ巧く画が撮れません。それを実感していて、もちろん周囲もそれは分かっていて、しかし、画は撮らねばなりません。
 そういう焦りが常にある中で、インカム越しにあれこれとどやされ....ます。
 で……さらに焦り、周辺が見えなくなります。それこそ、ファインダーの中しか見えなくなり、そして、インカムの声すら聞きづらくなる……という有様です。
 そういう、カメラマンとして幼い自分に戸惑いと不安を感じている私ですが、といって、そういった精神的なことを相談するような事もありません。
 しかし、今日は帰りの電車の中、それこそ幹部級の方から、「まぁ、今は場数だからな。今はインカムで叱られたりするだけで、もう周りが見えないだろうから…」と仰り、「あぁ、それは今まさに自分の状況だな。でも、つまりは皆、そういう道を辿ってきたのか」とある意味における今の自分への安堵、またこれからの課題というものが見えたりしました。

 今回の、応援実況はカメラ的な技術としては高度ではありませんが、その中でやることには、新人の私であろうと、ベテラン級の方であろうと同様の事が要求されます。
 無論、レベルはベテランのカメラマンにベテランのスイッチャーが指示する内容です。
 ですから、正直「今、それを求められても、わからん…」と思うことが多々あります。ただ、こういうレベルが標準である…という自分の目標を知る上では必要な事で、これが「お前は新人だから、とりあえずコレをやっておけ」という指導方針では確かに人材は育ちません(もちろん、段階というものは必要です。今回の「応援実況」は段階の一つです)。
 
 今はとにかく厳しいです。
 しかし、それは当たり前で、私の周りにいらっしゃる皆さんすべてが、それを乗り越えて、今の技量を発揮されていると、頭でなく「肌」で判ってくると、挫けそうになる意気込みも、初心へと帰る事が出来、さらに一歩進めていることを感じます。

 明日は、休みです。

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■2003年08月18日(月)  天は誰にミカタする?
 今日もお休みでした。
 これも降って湧いた休みです。

 ご存じのように昨日は雨で高校野球は中止。
 私は、昨日はもとから休みでしたので関係なかったのですが、しかしその影響で今日も休みになったのです。

 昨日は私は休みで、当然シフトにも入っていなかったわけですが、その昨日のシフトが雨で今日に繰り越されたので、当然そのシフトには私は入っていないわけです。
 ……というわけで今日は急遽お休みになり、昨日と併せ2連休となりました。
 正直、ゆっくり体を休めることが出来てうれしかったです。

 昨日は彼女とのデートで一日を使いましたので、今日は洗濯をして、整骨院へいって、買い物をして、晩飯は前から作りたかった麻婆丼を作って、ホームページもちょっと更新して、メール返信もして、HDDレコーダに録り溜めていた番組をDVD-RAMにコピーして……とここ最近たまっていた仕事をやりました。
 
 明日は、12時現場入りで良いので、今晩は一冊小説でも読んでから寝ようと思います。

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■2003年08月19日(火)  ハイビジョンテレビが欲しくなる…。
 中継本部や球場内にはいくつものモニタがありますが、そのうちオンエアを流しているテレビもいくつかあります。
 オンエアされている局は全部で三つ。NHKとABCとBS朝日です。
 このうち、ほぼリアルタイムといえる時間で番組を流しているのはABCのみ。
 NHKはだいたいリアルタイムに対して1秒〜1秒半映像が送れており、BS朝日は2秒前後遅れます。
 これは電送経路の問題ですが、BS朝日の場合は中継衛星へ送って地上に戻ってくるのに1秒、放送局側がエンコードして、受像器でデコードするのに1秒ぐらいかかっている為です。
 では、NHKが1秒半も遅れているのはどうしてでしょうか。もちろん、地上波です。この点についてVEさんに尋ねてみると、明確にはNHKの回線を見ていないので判らないが、兵庫県から東京本局まで中継箇所を経由させて、本局でHDからSDにダウンコンしているからではないか…という話でした。
 それにしても異常に遅い…という見解。どれぐらい遅れているかというと、リアルでピッチャーがボールを投げてからバッターが打つぐらいに、NHKはピッチャーがボールを投げます。
 このあたりの詳細を知っている方がいらっしゃるようでしたら、ご教授いただけると幸いです。

 また、今年の高校野球はBSデジタルでハイビジョン放送がされているわけですが、さらに音声も5.1chで放送されています。
 この5.1chサラウンドを体験できるコーナーが中継本部の隣に作られています(関係者専用)。
 この体験コーナーの存在は知っていましたが、行く機会がなかったので、今日は自分の仕事が終わってから、休憩中の別のVEさんと一緒に体験してきました。
 感想としては、音声よりも50インチプラズマディスプレーに映し出されているハイビジョン映像の方が印象的でした。
 5.1chのほうは、応援や歓声が360°聞こえますが、これらの音声は常に球場内に普遍的に存在しているので、音の定位がはっきりせず、あまり5.1ch空間を実感できません。むしろ場内放送などのほうが音の定位が明確で、こちらは5.1chならではでした。
 また、気になったのは「実況音声」。センタスピーカーからのみ実況音声が聞こえいているので、前方のしかも一カ所に明確な音が存在し、そこが際だってしまって逆に不自然な感じです。
 試しに、音声を2chに切り替えて聞いてみると、LRのスピーカーから音声が聞こえますので、実況音声にも広がりがあります。
 一緒に視聴したVEさんと、この点について暫く議論しましたが、私の意見としては「実況音声は基本的にはセンターSPだが、少しずつL/R SPにも振り分けた方が不自然さがなくなるのでは?」というもの。
 VEさんも、「一理ある」と納得してくださいました(笑)

 今日はVEさんとよく話した日でしたが、技術的な話をわかりやすく解説してくださるので、質問をするのもその答えを聞くのも楽しかったです。

 ちなみに、今日の仕事は特に失敗もなく、比較的満足できるカメラが出来たと思います。……まぁ、今日の構成は簡単なものでしたので。
 明日は、また忙しくてややこしい番組構成になりそうですので、気を抜かずがんばります。

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■2003年08月20日(水)  成長しているのか…停滞しているのか…。
 「気がつける」と「気をつける」というのは、似て非なるもので、特に前者の「気がつける」というのは視野の広さと想像力や構想力を表すのだと思います。
 対して「気をつける」というのは純粋に経験から来るものや予め決まった事柄の再認識であり、ある意味で出来て当たり前…と言えます。
 今日はそんなことを ふと思いました。
 
 昨日の日記に締めくくりに「気を抜かずに…云々」ということを書いていますが、今朝はもちろん気を引き締めて、現場に挑みました。
 昨日・一昨日までの失敗を糧に、今日は予め“こういうこと”をやってディレクタさんにんは“あぁいうこと”をお願いしてと決めて、現場でそのようにやっていました。
 「うむ、今日は幸先がいいかも」とか思いながら、放送の準備をしていたのですが、期待に反してインカムからは早速のダメ出し。
 朝から凹みます。

 そのダメ出しの対象は、「今日まで気がつかなかった事柄」。
 「今日まではそんなところに気をつけていなかった」にも関わらず、何の問題もなかったのに、「今日は気をつけていなかったから」問題があった……という私の問題の掘り起こしの甘さ(←こう書くと大層ですが…)が原因でした。
 気をつける対象には気をつけていたのですが、その気のつけかたの角度が違った…というか甘かったのです。
 (かなり曖昧な表現で文書を綴っていますので、読みにくいかとは存じますが、具体的に書くにはあまりにも恥ずかしいので、敢えてボカシ表現で記述します。)

 現場で、特に生中継の場合はカメラにタリーが来てから、場面の問題点に気がついてもどうしようもない事が殆どです。
 ですから、事前のわずかな時間に現場を見渡し、時間軸を未来まで読み、撮影をしていく上で問題が無いか検討し、あれば「予め」改善しておくのですが、……今の私には比較的近くの未来までしか検証出来ていません。
 これも経験によるところが大きいと思いますが、しかし自分の中では「そんな事ぐらい気がつけなかったのだろうか!?」と苦い思いをしてばかりです。
 現場では定常的に緊張している…というよりは「テンパってる」と言う表現の方が今の私には正しいと思いますので、経験の浅さと相俟って、空間的にも時間的にも視野狭窄に陥っているのだと思います。

 私のカメラマンデビュー戦終了まで、あと2日。
 納得の出来る終わり方でありたいものです。



 昨日、NHKの映像の遅延について、「詳細を知っている方がいらっしゃるようでしたら、ご教授いただけると幸いです」と書いておりましたところ、早速NHKのOBの方からメールを頂きました。
 大変勉強になりましたので、こちらに転載させてもらいます。
--------------------------------
 私の現役時代なので古い情報ですが、現場からCS回線か光回線で東京まで直接ハイビジョン伝送しているはずです。
 どちらの場合も遅延時間はBS放送と同程度です。(D/CやFS挿入で、もっと遅れます。)(光回線は料金が高額なので、甲子園−BK間のみで使用しているかも?)

 CS回線はNHK専用トラポンでハイビジョン伝送は2波可能です。
 輻輳時は随時トラポンを申し込んで使用します。また、宏哉さんが担当した様な地方局用は生でなくサマリーをCS回線(525)で定時伝送、関連局は直接CS受信していました。
--------------------------------

 以上です。
 情報をお寄せ頂きまして誠にありがとうございました。

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■2003年08月21日(木)  甲子園は暑く、そして雨も降り…。
 あと一歩。あと一歩で「自分的」には納得いく仕事になるのですが、やはり毎日何か失敗して帰っています。
 今日も昨日と似たような話で………本番中は特段失敗もないのですが、準備段階で矢張り…。

 さて、今日の甲子園は日中大変暑かったのですが、夕方になって各地に警報が出るぐらいの土砂降りの雨が降りました。
 私は既に仕事が終わっていて、中継本部で先輩方から色々と今後のためになる話を聞いていたのですが、急にプレハブの屋根を打つ大雨粒が降ってきて、中継のモニタを見てみると球場は土砂降りでした。
 そういう変化の激しい天候が災いしてか、さらにこの長丁場の中継負担が祟ってか、今日は2台のカメラが故障しました。
 一台は「1カメ」。主にP.C(ピッチャーとキャッチャーが映った映像で、スコアボード横付近から移しており、主としてSBO表示が入る画面となる)用のカメラですが、どうも「熱」にやられたらしいのです。
 1カメには代替機が持って行かれ、その後の仕事は継続されましたが、交換中は同じ場所にある他の仕事をするカメラが、一時的にP.Cを撮っていたようです。
 次に、雨が降り始めてから壊れたのが「S.S」。S.Sとはスーパースローの略で、めちゃくちゃ綺麗なスロー再生の映像を見せてくれます。
 このカメラはある意味テレビ中継の“売り”ですので、これが構成上掛けると大変です。他の普通のコマ送り風のスローで対応するしかありません。

 実は、中継の現場には中継に使っている機材のメーカの技術者が常に待機しており、故障などのメンテナンスに対応する体制が整っています。
 今日は二つともSONYのカメラが壊れたので、SONYの技術者の方が中継本部にやってこられて、その場でカメラの中身を開いて検査されていました。

 S.Sの方は、雨の影響ではなく、雨が降ってきたためにしたカメラカバーで熱がこもり、それで一時的に故障したのではないか……という結論で、十分に冷却されたあと、再び現場に戻されました。
 そのあとは、問題が無かったようです(私は途中で現場を引き上げたのでなんとも判りませんが…)

 また、ヒヤリとしたのは、豪雨の中の落雷でした。
 一瞬、中継本部内の蛍光灯が消えかけ、また30台近いモニタが瞬間暗くなりました。
 中継本部にどよめきが起こります。
 直ぐに各部に今の電圧低下による影響が機器に起こっていないか確認されましたが、どこも問題なく、そのまま中継は続けられました。
 ただ、どうもお隣のNHKさんは、ちょっとその落雷後騒がしかったようで、スタッフが走り回っていた…とかいう話です。もしかしたら何か不具合が起こったのかもしれません。
 尤も、その瞬間もその後も、両局とも野球中継はテレビで続いていましたので、放送そのものに影響を与えるほどの事ではなかったのかもしれませんが…。
 
 なお、電源そのものは関西電力の電気を利用していますが、予備に自家発電機が用意されています。(ちなみに、VEさんの話によると「用意はしてあるけど、この本部の機材分の電気を賄えるかは、テストしてないから判らない(笑)」とのことです…)
 また、中継車は自前の発発(発動発電機)が乗っていて、その発電容量は一般家庭の消費電力の約25世帯分を賄えるそうです(たしか…)。

 応援実況カメラ、残すところ、あと一日となりました。
 有終の美を飾れるよう、全力を尽くします。

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■2003年08月22日(木)  あぁ、栄冠は……今年は私には輝かなかったなぁ〜。
 う〜っ! やっぱり納得の出来る終わり方を出来ませんでした。
 まだまだです。もう、自分に腹が立ちます。
 スイッチャーさんの意図を計るのも甘いですし、インカムのPGM(実況音声)にも十分に耳を傾けられていません。
 
 今日も、途中巧く画を作れなかった事があり、そのためその直後から何度も何度も練習をしていたのですが(ゲーム中に自分の画が使われることはまず無いため)、そのときPGMでは、ある選手の話になっていました。
 しかし既にこの時、私は今し方巧く出来なかったカメラワークの練習に必死になっており、全くPGMを聞いていない状態でした。
 さらに、この時、映像は本線の映像に戻っていましたから、イニング終了までは自分の仕事が無いはずだとして、練習をしていたのですが、どうもグラウンド上では、応援実況の実況アナウンスに合わせて画を切り替える余裕があったらしく、実況の内容に合わせてその瞬間だけその選手の画が必要だったようなのです。

 練習することは悪いことはないのですが、しかしその際でも、あるいは既に本線の画が使われいて、基本的には自分のところにタリーが来ることがないはずの時にでも、実況音声やグラウンドの状況には十分に配慮していないといけないのです。
 普段の、球フォローや選手フォローの練習の時は、実況やゲームの状況に合わせてカメラを振っているのですが、今回は全く関係のない画を作る際に失敗したカメラワークでしたので、グラウンドの状況そっちのけで、その練習をしてしまっていたのです。
 
 自分の所にタリーが来る事が判っているとき(つまり応援実況として地方局にオンエアされる時)は、実況音声に合わせてカメラが振れるようになってきましたが、それ以外の時にも、「主体は応援実況の仕事である」という事を忘れてはいけなかったのです。
 猛反省です。

 甲子園期間中にあるカメラマンから「オンエアは練習の場ではないんだ」という苦言を聴いた事があります。
 本当にその通りだ…と改めて思います。
 今の私において、実質的には「練習」としての要素がこの甲子園の中継にあったとしても、オンエア的には「プロの仕事」として分け隔て無く電波に乗って全国に瞬時に流されてしまうのです。
 例え「仮免」の教習生でも、「仮免練習中」の札も「初心者マーク」も無しに、他の車と同じように公道を走らないといけないわけです。
 もちろん、どの道を走れば安全に走行できるか、そしてその目的地は何処か、ということを設定するのは、各部門の上司でありシフターです。ですから、シフターさんなどの采配の力量も重要です。
 そして、まずもってその采配は正しいのですから、運転者たる私のような新人は、その道を冷静に正確に、一度教わったことはしっかりと活かして、走っていくことを期待されているのです。
 決して、ドリフトをしろとは言われて居らず期待もされていません。しかし半クラが出来てエンストなしに発車できる事は求められているのです。
 なるほど、確かにカメラマンの仕事は車の運転に似ているかもしれません。
 他の車(カメラ)の状況や道路周辺(現場)の様子を常に把握しながら、適切な運転(カメラワーク)をしないと、それこそ事故になります。
 そして、運転の上達には教習所ではなく、公道(オンエア)での運転経験が欠かせません。
 違うとすれば、仮免者でも初心者であっても、それを明示するプレートが存在しないということです。

 今年の私の甲子園は終わりました。残念ながら明日の決勝戦では応援実況はありません。
 今日の準決勝で私は甲子園を去ります。
 気分は、今日敗退した江の川や桐生第一の選手です。
 だいぶん仕事が判ってきて出来るようにもなってきていたのですが、今回の自分の仕事に遺恨を残さず…というわけにも行かず、来年の春のセンバツに再戦を臨むほかありません。(尤も、私の仕事内容的には地方予選敗退レベルかもしれませんが…)

 今回の甲子園応援実況カメラは本当に勉強になりました。
 多くのベテラン、多くのカメラマンから、それこそ無量の知識と技術を学びました。
 まだまだそれを形に出来るだけの技量も精神的な余裕もありませんが、しかし今回の経験を踏み台に、次のステップへ足を運んでいきたいと思います。

 最後になりましたが、甲子園期間中のカメアシ興行紀を読んで頂いて、応援メールをくださった、西野さん、鈴木さん、三宅さん本当にありがとうございました。
 そして、毎日下名の拙文を読んでくださった読者の皆々様に感謝申し上げます。
 明日はENGのカメアシとして仕事をしてきます。

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■2003年08月23日(土)  ゴルフENG
 長かった甲子園も昨日で終わり、今日は全く違う仕事に就いております。
 ゴルフです。
 奈良県の山奥まで行って参りました。
 「ゴルフじゃ、いつもの仕事と同じだろ?」と思われるかもしれませんが、いつもと違うのは「中継」ではなく「ENG」取材であるということです。

 ゴルフのENG取材と聞いたとき、私は中継の仕事の経験から「1番ホールから13番ホールあたりまでの選手のプレーをフォローする取材かな」っと推測しました。
 というのは、通常のゴルフ中継では、中継のカメラは大体13か14番ホール以降からしか設置されず、それまでのホールはENGがピンポイントで取材をしているのです。
 ですから、今回のゴルフENGは、上記の内容だと思ったのです。
 しかし、実際には全く違いました。

 そもそも、中継は入っていなかったのです。
 つまりENGオンリー。
 しかし、ENGですべてのホールを回って数十人いる選手をフォローすることは不可能です。
 では、どんな取材体系になったかというと、1・9・18ホールをメインでカバーして、ティーショットは殆ど撮らず、セカンドショットからグリーン上のプレーをメインに撮るというものでした。

 カメラクルーは5・6班に別れ、各ホールでプレーを収録します。
 私は、三脚持ち+バッテリー・テープ交換の仕事です。
 はじめは音収録も私がする予定だったのですが、一緒に回ることになったもう一つのカメラチームに音声担当者がいましたので、その音をワイヤレスでもらう、という形が取られ、私の音声マンとしての仕事はありませんでした。
 カメラマンは普段は中継部にいらっしゃる若手の方で、昨日までは一緒に甲子園で仕事をしていました。

 それにしても、今日はいつもに増して暑く、甲子園以上の日光を全身に浴びます。
 今日までの中継の仕事で左腕にしていた腕時計の形が、日焼けした肌の中で跡となって残り、それでは今日は良い機会だから…と右手に腕時計を付け替えて仕事をしてみると、夕方には右手に新しい腕時計の跡が作られてしまいました…。

 収録ですが、私の就いたカメラでは、バッテリーの交換は一度しかなくそれも表彰式の前に念のため。収録テープはベーカムSPの30分テープを6本消費しました。
 チームによっては6本を越えて予備テープまで使った班もあれば、「1本」という驚異的な本数しか使っていない班もありました。
 流石に「1本」だけ…というのには皆、驚く……というよりは……という反応でしたが、内容は一通り収まっていたそうです。 

 さて、帰社します。
 機材庫に着いて、ENG機材を片づけ、16時半。
 今日は朝の6時集合でしたので、仕事を終わるには良い感じの時間です。
 しかし、今日は「甲子園の決勝戦」………言い換えると『中継機材撤収日』です。
 さぁ、どうしましょうか?
 
 まだ今は、甲子園からの中継車や機材車は帰ってきていません。 
 今、家に帰れば、はっきり言って「肉体的」に楽です。
 シフト的にも「甲子園撤収・機材降ろし」とは書かれていません。
 では、ここで素早く帰るべきでしょうか…。

 正直言いましょう。
 「帰りたかった」です。
 しかし、この半月間、甲子園の仕事に就き、なのに最後の最後は知らんぷりして、機材の片づけを他の先輩方にだけお願いするわけにはいきません。
 それに、私は甲子園の仕事始まりで大きな失敗もしています(過去の日記参照)
 私は意を決して、機材庫に残ることにしました。
 
 聞いていた話によると、毎年17時頃にはスタッフが帰ってくるとのことでしたが、待てども待てども帰社の気配がありません。
 日も暮れ、ようやく19時過ぎに機材車が帰ってきました。
 ケーブル、カメラ、レンズ、その他諸々を車から降ろし、汚れた機材は掃除・洗浄し、機材庫の元の棚へと片づけていきます。

 私が「機材降ろし」に残っていた事は、今日甲子園の現場に行って居られた皆さんからは歓迎され、本当に残っておいて良かったと思いました。
 一方で、私と今日一緒にゴルフ取材に行った先輩は、逃げるように家に帰ってしまわれてましたので、非難囂々でした(笑)
 機材が片づいた後、会社のデスクに戻って軽く打ち上げです。
 ビールとおつまみと…おなかの空いた人はカップ麺でささやかに、今日までを労いました。

 撤収手伝いも含めて今日は22時半までの肉体労働でした。 

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■2003年08月25日(月)  ※番外編※
 昨日、今日はお休みでした。
 この休暇を利用して、夏の甲子園で私が撮った写真を纏めてみました。


ヒロヤの空 甲子園の夏


 夏の甲子園とその裏舞台を是非ご覧ください。

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■2003年08月26日(火)  天候不順。
 2連休も明け、今日は野球中継でした。
 ただし、二軍の野球中継。
 甲子園近くの球場での某球団対某球団の二軍試合です。

 球場の規模も小さいですが、中継の規模も小さくて、まぁ失礼ながら納得。
 全部で四カメ体制。
 バックスクリーン横に1カメ。一塁側応援スタンドに2カメ。一塁側ベンチ横に3カメ。三塁側ベンチ横に四カメというオーソドックスなカメラ配置です。
 中継車も普段の大型中継車ではなく、愛称「ミニ中」と言われる小型中継車(小型といっても、キャンピングカーぐらいのサイズはあります)。それにプラス音声中継車です。

 セッティングも手早く行われ、試合開始まで三時間近く余裕がありました。
 今日のセッティングでは球速を計るためのスピードガンの組み立て方を勉強させてもらいました。
 今までもスピードガンのセッティングの仕方を勉強する機会は何度もあったのかもしれませんが、いつも気が付くとセッティングが終わっていて、その組み立てを見たことがありませんでした。
 今日はタイミングよく、他の仕事も済ませてしまっていて、スピードガンを組み立てる現場に居合わすことが出来ましたので、組み手て居られたベテランカメラマンに「スピードガンの組み立て方を教えてもらっても良いですか?」と尋ねてみますと「勝手に見てろ!」と言われたので、横からその組み立てる様子を見させてもらいました。
 無論、「このケーブルは此処に差して、こういう配線をする…」などという説明は一切無く、ただ「見て」、「覚える」だけです。
 本当に人によって教え方は色々ですので、何となく見学していては何も身に付かないことがあります。
 スピードガンの結線は簡単なもんでしたので、次回からは問題なく組み立てられそうです。
 
 さて生まれてこの方、二軍の試合を見るのは初めてでしたが、お客さんもそれなりに多く、小さな球場の小さな観客席は満員でした。
 試合は殺伐と行われ、迫力には少々欠ける感じ…。それはプレーの所為なのか、観客が少ない所為なのか…。

 試合中は、カメラの動きの勉強をしたかったので、3カメの横に席をもらって、カメラマンが覗いているファインダーをさらに後ろから邪魔にならないように覗き込んで、ファインダー上ではどういうサイズでどういう画を撮っているのかを盗み見ていました。

 日中は、朝の方の不安定な天気と打ってかわって、キツイ日差しがグラウンドを照りつけます…。と思えば、シトシトと中途半端な雨が降ってきたりと、嫌な感じの天気。
 私は朝方の天候に合わせた、長ズボンの服装でしたので汗だくに…。
 替えのTシャツを持ってきていましたので、仕事が終わってから着替えることにしましたが、脱水症状を起こしそうな程に発汗していました。

 明日は甲子園でのプロ野球中継……の予定でしたが、急遽私は明日はお休みになりました。
 ということで、予定外の休暇を楽しみたいと思います。

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■2003年08月28日(木)  あるいは、やはり私が責任者である…という認定でしょうか。
 最近は一日おきに休暇が貰えているのですが、生活がちぐはぐになり、体は休めるのですが、精神が休まりません。
 あと、九月度にはいってからの休暇が初頭にこれだけ貰える…ということは、九月中旬から後半にかけての休暇の少なさが予想されます。

 さて、今日はプロレス中継でした。
 市内の体育館での生中継。
 平日にもかかわらず、18時にスタートするファイトを見ようと体育館いっぱいの観客が詰め寄せました。
 
 さて、仕事の話ですが、プロレス中継のカメアシは大変です。
 メインはもちろんケーブル裁きで、その点ではいつも通りですが、まずカメラがリング沿いによく動きますし、他のプレス関係者が大勢いますので、動きづらいのなんのって……。
 また、場外乱闘などになれば、カメラマンに付いていくのが一苦労。
 ケーブルを新聞のカメラマンやセコンドに踏まれて動きが取りにくいですし、乱闘に巻き込まれないように注意しないといけません。

 今日、私が就いたカメラマンはプロレス中継をよく担当されるようで、前回のプロレス中継の時も私はそのカメラマンに就いたのですが、今日は体調が悪かった所為もあるのかあまり機嫌がよくありませんでした。
 いつもの明敏さもちょっと曇っていて、他のカメアシさんからも少々不満の声が…。
 今日は前回の時のカメアシと違って、カメラマンの直ぐ後ろについてケーブルを捌く役割。
 さらに、私の後ろには二人のカメアシさんが就いてくださっていて、補助をしてくださる手はずです。

 さて、試合が始まります。
 本当に今日はカメラマンの機嫌が悪いのか「おまえ、(周囲の状況を見ずに)カメラばかり見とったら、殺すぞ」と脅されます。正直、いつも比較的温厚なイメージのこのカメラマンからは想像も出来ない脅し文句です。
 あまり、気分の良い出だしではありませんでしたが、黙々とケーブルを捌いていきます。
 しかし、やっていく中で気になり始めたことがありました。
 それは、私の後ろの他のカメアシさんが十全なアシストをしてくれていないのです。
 同じケーブル捌きでも、私はカメラマンの細かな動きに付いて、ケーブルを繰り出し、カメラマンの死角になる部分に他のプレスカメラマンが居たら接触するのを防いだり、バックで歩くカメラマンを誘導したりする…という仕事があります。もちろん、ケーブルを介錯しながらです。
 そして、後ろにいるカメアシさんは、主に私がケーブルを繰り出したり巻き取ったり出来ないときに、そのカメアシさんの手元にあるケーブルの束から処理する…という役目を負います。
 しかし、どうでしょうか…。
 後進するときに、当然ケーブルが余り弛みますが、巻き取る余裕がないので後ろのカメアシさんにケーブルを引っ張ってもらって、足に絡むのを防いでもらいたいのですが、ケーブルは弛みっぱなしです。
 リングのコーナーを回って、別サイドに移動するときは、コーナーやその付近にいるプレスカメラマンにケーブルが引っかかるので、本当は介錯して欲しいのですが、他のカメアシさんは動いてくれません…。
 
 基本的にカメアシさんは私よりも長くこの仕事をして居られるはずで、バイトの方達といっても私よりは遙かに知識も経験も、また気配りもあるはずの先輩なのですが、どうも今日は調子が狂います。

 今日、一番最悪だったのは次の場面です。
 事前に、「レスラーが控え室に戻って行くところをフォローする。そこで乱闘が起こるので、ケーブルの長さを100メートルから150メートルに変更する」という話がありましたので、その心構えで仕事をしていました。
 もちろん、他のカメアシさんも知っている話です。
 そして、遂にレスラーをフォローして控え室付近での乱闘…というシーンになりました。
 カメラマンがレスラーを追い、私はケーブルを繰り出して、競技場を出て控え室に向かう階段を下りていきます。
 しかし、ケーブルが全く足りません。
 手に持っているケーブルは精々20メートル。それ以上持つとリング周りでは動きが取りづらく、俊敏性を欠きます。
 ですから、この様に場外に出る時は、後ろのカメアシさんの手元にあるケーブルを先に消費して、そして、出先の小回りの必要なところで私の手持ちのケーブルを使うのですが、もうすでに場外へ向かっていく初めからケーブルが後ろから付いてきません。
 しかたなく、自分の手持ちのケーブルを落としますが、持っている分が少ないですから、階段の途中で無くなってしまいました。
 前を行くカメラマンには、「あと10メートルです!」「あぁ……もう無くなります!!!」と殆ど絶叫に近い状態で知らせていました。
 そして…ついにケーブル長限界です。
 ケーブルが張ります。そして、そのためにカメラマンの動きが止まり、前に行きたくてもいけなくなります。
 レスラーの乱闘はまだこの先です。
 信じられない! という表情と、怒りの目で、私に振り返ったカメラマンは、
「何とかせんかぁ〜っ!!」
 会場の外だというのに、中にいたスタッフに聞こえた…というぐらいの大きな怒号で私に言いつけられます。
 正直、これは理不尽だと思いました。
 なぜなら、此処でカメラが足止めされているのは私のケーブル捌きの問題ではなく、後ろにいたカメアシさんが全くフォローしてくれて居なかったからなのですから。
 私の手持ちは20メートルそこそこ。しかし、全ケーブル長は150メートルもあるのですから、後ろのカメアシさんの手元には130メートルはあることになります。
 それをちゃんと繰り出してくれていればこんな事にはならなかったのです。

 すぐさま階段を駆け上がり、会場に戻り、後ろにいるカメアシさんの元に駆け寄っていきます。
 もう、信じられない光景です。
 ケーブルは絡まったように束になっており、その殆どは全く繰り出されていません。
 私の付いたカメラには私を含めてアシスタントは3人も居たのですから、一人は束の繰り出し、もう一人は、会場を出たところの角でケーブルが詰まらない様に介錯する……というのがセオリーの配置です。
 しかし、後ろの二人ともがそのダマになったケーブルを漸く繰り出している…という状態。
 最早、何故、どういう正当な理由があって、誰もを瞠目させるような怒号を私が浴びせられたのか理解できませんでした。

 ただ、場外乱闘が終わって、次の試合が始まるので急いでそのカメラマンと会場に戻るときに、「ありがとう。良くやってくれた」と急に優しくお礼の言葉を仰ってくださったのは、さっきの怒りの矛先を多少なりとも不当なものであったと思ってくださったからでしょうか…。
 その後も、カメアシさん達のサポートは大して受けられず、また期待もせずに、黙々とワンマンプレーだと思いながらケーブルを捌いていました。
 まさか(彼らにとって)この期に及んで、まだまだ未熟な私が殊更にケーブル捌きの指示を与えないといけないとは思っても居ませんでしたから、正直今後はその点の指示について考えないといけないと思いました。

 今日はそんなこんなで、自分に非がある失敗と、他のカメアシさんに非がある失敗とをすべて一身で受けながら仕事をしましたので、どっと疲れました。

 明日は、またまた急にお休みとなります。
 ゆっくりと体と心を休めたいと思います。

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■2003年08月30日(土)  いうなれば、軟式野球的甲子園。
 一日休みを挟んで、今日は全国高校軟式野球選手権大会・決勝戦の中継へ行って参りました。
 現場は甲子園球場をさらに西へ行った兵庫県の某球場。
 放送席顔出しカメラを入れて5カメ体制です。
 ただし、今日は生中継ではなく中継収録。
 ここ数日の天候不順が祟って、日程が順延されており、本当は昨日が決勝戦だったのですが、本日に繰り越されていたのです。決勝戦が昨日であれば生中継でしたが、今日になってしまったのでVTR収録となったようです。(編成の問題ですからあまり詳しくは判りません)
 そのお陰で、昨日は私の仕事は休みだったのですが…。
 
 今日は現場で到着後の時間的な余裕も手伝い、カメラを組み立てるチャンスが2回もあり、デカカメ組み立ての良い練習をさせてもらいました。
 流石に、もう普通に段取りよくカメラを組めるようになりまして、また組み立て速度もそれほど遅くはないと思います。
 また、試合終了後はカメラの解体も1台分を一人だけでやることが出来ましたので、今日はカメアシ的に有益な日でした。

 本番中は、私は放送席顔出しカメラ(HDC-750)を担当。
 特段緊張することもなく、与えられた仕事を淡々とこなす…という心境でした。
 この放送席カメラは、試合終了後の勝者インタビューも撮るカメラとして割り振られていましたので、試合が終わりそうな頃を見計らって、電源を落とし、ケーブルを抜いて、グラウンド脇までカメラを持って降りて、そこで新たにインタビュー用のケーブルにカメラをつなぎなおして、インタビュー担当カメラマンが到着するのを待ちます。
 
 が………、試合がなかなか終わりません…。
 9回裏までを1対1で終え、いよいよ延長戦に突入。
 両者とも長打が出ず、「ライトゴロ」というあまり耳にしない安打が出たりと、軟式野球独特(?)の試合運びとなります。
 実はこの時、我々スタッフはヒヤヒヤというかイライラというか……とにかく落ち着かない気分になっていました。
 何故かと言いますと、このまま引き分けで15回を終了すれば、明日に再試合…となるからです。
 つまり、試合のやり直しです。
 しかし、中継技術サイド的には色々と面倒なことがあります。
 特に、球場に横付けしている中継車ですが、泊め置きの許可は取っていませんので、一旦中継車は会社に戻す必要があります。
 そうなると、中継車につながっている全てのケーブルを抜き、養生しておく必要が出てきます。
 そして、翌日再び中継車を現場に入れて、結線し、回線チェックを行う……という今日の朝やった事をまたやり直さなければなりません。

 そして何よりも、今日で試合が終われば、この仕事に就いているスタッフは皆、明日はお休みになっているのです!
 実は、「昨日・今日・明日」と三日間は「軟式野球」というシフトの割り当てがなされており、うち後半二日は(雨予備日)として確保されていたのです。
 それで、昨日は天候の都合で私たちの仕事は休みとなったわけで、また、今日で優勝校が決まれば、明日の予備日は不要になりますので休暇になる…という仕組みなのです。

 さぁ、休みが一日出来るか、それとも潰れるかは、軟式野球球児達に懸かっています。
 無得点のまま延長戦は進み、いよいよ明日の再試合を覚悟した13回裏……。遂に待望の1点が入り、試合終了。
 現場に安堵の溜息が漏れたのは言うまでもありません。

 予定通り勝者インタビューを行い、表彰式を撮影して本日の収録終了です。
 手早く、現場の機材をバラし、ケーブルを巻き取り、それらの機材を機材車に積み込んで、現場を引き上げました。
 帰社して19時前。今日は6時半集合でしたので、たっぷり12時間は働いてきました。

 明日と明後日は連休です。

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