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>>> 映像信号のデジタル化
〜 HDVフォーマットとは 〜
(更新日:05/05/06)
誕生の経緯
2002年秋。
Victorが、衝撃の発表を行った。
それは世界初の家庭用デジタルハイビジョンビデオカメラの発売である。
“GR-DH1”という型番で発売されたこのビデオカメラは今日普及している Mini DV テープに、MPEG2形式でハイビジョン記録を行うというものであり、Victorが独自に出してきた規格であった。
その後、Victorの他、SONY、Canon、SHARP との計4社でDVテープへMPEG2でデジタルハイビジョン記録をする統一規格を策定した。
そして、その規格こそが“HDV”である。
2004年3月のCeBITでSONYは初めて民生仕様のHDV1080iカメラ(モックアップ)を出展。
翌月4月のNABではノンリニアメーカ各社が、カメラの発売を待たずしてHDV1080i対応のノンリニアシステムの発表を行うなど、既に業界でHDVは民生用デジタルハイビジョンフォーマットとしてのデファクトスタンダードの地位を築くという現象が起こった。
同年9月7日、SONYは世界初のHDV1080i方式を採用した“HDR-FX1”を発表。(発売は同年10月15日)
11月10には業務仕様のHDVカムコーダ“HVR-Z1J”とHDVレコーダ“HVR-M10J”が発表され、時代はいよいよ低価格帯機材でのHD制作を迎えることになる。
2つのHDV
HDVの規格には大きく分けて2つある。
一つはHD1が採用した720pによるプログレッシブハイビジョン記録。そしてもう一つがSONYがHDV規格に組み込んだ1080iのインターレスハイビジョン記録である。
720pデジタルハイビジョン(通例的に720p)は、解像度1280x720で、フレームレートは60fps/30fps/50fps/25fpsである。
50fspや25fpsというのはあまり聞き慣れないフレームレートであるが、これは海外のテレビ規格であるPAL向けの規格である。
1080iデジタルハイビジョン(通例的に1080i)は、解像度1440x1080で、フレームレートは60fps/50fpsである。
圧縮方式はいずれも MPEG2 Video で Profile & Level:MP@H-14 を採用している。
HDV規格
HDV規格をもう少し詳しく見ていく。
@記録メディア
HDV規格で想定されているメディアはDVテープに限る様である。
規格上はスタンダードDVカセットテープも、Mini DV カセットテープも使えるようで、NAB2005で発表された Victor BR-HD50E HDVレコーダーなどがスタンダードDVカセットテープの利用も謳っている。
他方で、SONYは SONY XDCAMシリーズ において、ディスクメディアの特性を活かしたバリアブルビットレートを採用したHDV記録(厳密にはHDV規格を外れると思うが)を模索しているようである。
Aビデオ信号
HDVでは、1080i方式に於いて、60i/50iに対応、720p方式に於いては、60p/30p、50p/25pに対応している。
B解像度・アスペクト比
1080i/720pともにアスペクト比は16:9を前提とした画素構成になっている。
そのため、720pの場合【1280 x 270】となり、1080iの場合は本来ならば【1920 x 1080】であるところを、【1440 x 1080】としているため、正方画素ではなく横に長い画素となっている。
C画像圧縮方式
詳細は後述するが、MPEG-2 VideoのProfile & Level:MP@H-14 を採用している。
MP@H-14は「Main Profile@H-1440 Level」のことであり、「双方向予測を行い、階層符号を持たず、上限解像度 1440pix x 1152pix x 60fps」の圧縮を行う規格であり、HDVのもつ解像度とフレームレートをカバーしている。
D輝度サンプリング周波数
720p・1080i のそれぞれの輝度サンプリング周波数は、前者が 74.25MHz、後者が 55.7MHzである。
74.25MHというのは標準的なフルフレームデジタルハイビジョンのサンプリング周波数である。
輝度サンプリング周波数をを求めるには、有効画素数ではなくブランキングも含める総画素数から求める。
720pの場合、
60(Frame) x 750(Line) x 1650(Pixel) = 74250000 = 74.25MHz
と計算される。
同様に、1080iの場合は、
30(Frame) x 1125(Line) x 1650(Pixel) = 55687500 = 55.6875MHz
と出る。
E映像サンプリング構造
HDVでは、MPEG2 MP@H-14 の規定で4:2:0というサンプリング構造を持つ。
映像サンプリング構造は、情報量が多くなる動画情報の色差信号を輝度情報に対して少なく間引くための考え方で、4:2:0では、4:2:2サンプリングを行った後に、さらに垂直2ピクセルの色差情報をサブサンプリング(平均化)し、1ピクセルの情報量は12bitになるようにして情報量を抑えている。
もちろん、4:2:2サンプリングが16bit/pixelであるのに対し、4:2:0の方が画質は劣ってしまう。
F映像量子化ビット数
「量子化ビット」とは、アナログ信号の縦軸(信号強度)を何段階に分割してデジタイズするか、というもので、HDVフォーマットでは8ビットとなっている。
8bitの場合、表現出来る階調は256(2の8乗)段階である。
256段階といっても、Y:Pb:Pr のそれぞれが256段階であるので、色の表現は16,777,216段階(256の3乗)色(モノクロ階調を含む)が可能である。
G映像ビットレート
1080i(1440x1080x30fps)の場合、4:2:0で8bitから求められる、デジタイズ直後のビットレートは、
{(1440x1080x8)+(720x540x8)x2}x30≒482Mbps
と計算出来る。
同じように、720p(1280x720x30fps)の場合、、4:2:0で8bitから求められる、デジタイズ直後のビットレートは、
{(1280x720x8)+(640x360x8)x2}x30≒332Mbps
となる。
ちなみに、DVフォーマット(720x480x30fps、4:1:1、8bit)の情報量の計算を行ってみると、
{(720x480x8)+(180x480x8)x2}x30≒125Mbps
となるので、HDV1080iはDVの4倍近い情報量を持つ。
さて、この様にデジタイズされたデータを今度は符号化(エンコード)して、データ量を圧縮する。
その結果、1080iで25Mbps、720pで19Mbpsとなる。
H音声方式
HDV規格の音声方式は、純数学的な見地からはDVと比較すると若干脆弱になっている。
DVフォーマットに採用されていた非圧縮のリニアPCMはなく、汎用性のある“MPEG1 Audio Layer II” ……つまりMP2を採用している。
サンプリング周波数は48Hz、量子化ビット16bitと一般的なサンプリング量となっている。
ビットレートは可能な限り音質を保つために384Kbpsの高音質モードで記録される。
基本的には2ch収録の規格であるが、HDVの拡張規格としては2chの音声を2系統で記録する規格も定義されているらしく、その場合は384Kbpsをそれぞれの系統で分け合うことになるようだ。
なお、一般的な論評では上記 MP2 384Kbps で記録された音声データは十分に実用に耐えうるとされている。
Iストリームタイプ
MPEG2規格には大きく分けて2つのストリームタイプがある。
一つは、DVDなどに用いられるProgram Stream(PS)と、デジタル放送などで利用されているTransport Stream(TS)である。
HDV規格の720pでは、MPEG2のストリームタイプに Transport Stream が用いられている。
将来的には、デジタル放送のダイレクト録画や、Blu-ray Disc との連携が可能になる筈である。
現状でも、同じく MPEG2-TSを採用しているD-VHSとは連携可能であり、IEEE1394を用いてデータの交換が可能である。
一方、1080i規格はTSでもPSでもなく、その基本要素のPacketized Elementary Stream (PES)の状態で記録されている。
詳しくは別項に委ねるが、PESはTS-PacketやPS-Packよりもヘッダ情報が少ないため、テープ上の記録領域を最大限に活用してデータが記録できる。
下のテーブルはHDV規格とDV規格の仕様表である。
ビデオ規格 | HDV | DV-SD | |||
映 像 規 格 |
ビデオ信号 | 720/60p、720/30p 720/50p、720/25p | 1080/60i、1080/50i | 480/60i | |
解像度 | 1280x720 | 1440x1080 | 720x480 | ||
アスペクト比 | 16:9 | 4:3 | |||
テ | プ |
テープ幅 | 6.35mm | 6.35mm | ||
カセット | DVスタンダード/Mini DV | DVスタンダード/Mini DV | |||
記録時間 | DVスタンダード:270分 | DVスタンダード:270分 | |||
Mini DV:80分 | Mini DV:80分 | ||||
記 録 方 式 |
テープ送り速度 | 18.831mm/s | 18.831mm/s | ||
記録方式 | 回転2ヘッド | 回転2ヘッド | |||
ドラム回転数 | 9000rpm | 9000rpm | |||
ドラム径 | 21.7mm | 21.7mm | |||
トラックピッチ | 10μm | 10μm | |||
トラックフレーム | フレーム:10 | フレーム:10 | |||
記録速度 | 9.9m/s | 9.9m/s | |||
最短記録波長 | 0.49μm | 0.49μm | |||
映 像 |
圧縮方式 | MPEG-2 Video(MP@H-14) | フレーム内DCT | ||
サンプリング周波数 | 輝度:74.25MHz | 輝度55.7MHz | 輝度:13.5MHz | ||
サンプリング構造 | 4:2:0 | 4:1:1 | |||
量子化ビット数 | 8bit | 8bit | |||
ビットレート | 約19Mbps | 約25Mbps | 25Mbps | ||
音 声 |
音声形式 | MPEG-1 Audio LayerII | リニアPCM | ||
サンプリング周波数 | 48kHz | 48kHz | 32kHz | ||
量子化ビット数 | 16bit | 16bit | 12bit | ||
チャンネル数 | 2ch | 2ch | 4ch | ||
ビットレート | 384kbps | 1536kbps | 1536kbps | ||
シ ス テ ム 他 |
システム規格 | MPEG-2 Systems | DV codec | ||
ストリームタイプ | Transport Stream | Packetized Elementary Stream | − | ||
インターフェース | IEEE-1394 (MPEG2-TS) | IEEE1394(DV) |
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