#!/usr/local/bin/php 【Next-Zero】『FIRECODER Blu レポート/処理速度』
 
 


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〜 FIRECODER Blu レポート 〜


(提出日:09/04/27)



 Thomson Canopus FIRECODER Blu は、動画ファイルを高速でエンコードするハードウェアアクセラレータだ。
 H.264 / MPEG2 コーデックをトランスコードすることに特化したハードウェアで、東芝の SpursEngine を搭載する。


 SpursEngine は、PLAYSTATION 3 に搭載されて話題になった Cell と言われるプロセッサが内包する Synergistic Processor Element (SPE) と言われるプロセッサコアを採用している。

 スペックとしては、Cell の SPE が 8個 で各3.2GHzで駆動しているのに対して、SpursEngine では、SPE は 4個で各1.5GHz で動作している。
(※実際は、Cell の SPE は、リダンダンシーの為7コアが使用され、1コアは未使用)

 なお、SpursEngine の消費電力は 10W台と抑えられている。


 SPE は 浮動小数点演算を得意とし、SpursEngineでは H.264 と MPEG-2 のエンコード・デコードに特化した設計が為されている。

 その為、PCが搭載する CPUに演算処理させるよりも速く H.264・MPEG-2 をトランスコードすることが出来る。
 特に、現在のことろ H.264 動画ファイルのトランスコードには、実時間よりも大幅に時間が掛かることが多く、編集〜Blu-rayオーサリングに於けるワークフローの中で、H.264へのエンコード時間の短縮が求められていた。

 また、その高速処理能力を利用して、従来のSD解像度の画像から高解像の画像を作り出す「超解像」技術も搭載されている。
 これは、『再構成型フレーム内超解像』と言われるアルゴリズムを用いており、それに基づくプログラムを SPEで走らせることにより実現している。
 「超解像」は一種のアップコンバート技術であるが、単純な画像情報の拡大ではなく、画像情報の分析と摺り合わせにより、本来あったであろう画像情報を正確に推定して再現する技術である。

 超解像技術については、「Impress Watch (http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081030/dg102.htm)」内に分かりやすい記事が掲載されていたので、参考されたい。



 さて、それらの技術を実装した Thomson Canopus FIRECODER Blu であるが、実際にどれぐらいのエンコード速度を誇り、また画質などはどのようなレベルであるのか検証してみたい。


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■トランスコード時処理間

 早速、動画ファイルのトランスコードテストを行ってみた。

テスト1;
 AVCHD(H.264) → canopus HQ codec

 このテストは、AVCHDカメラで撮影したデータを、“Canopus AVCHD converter ver.3.10”を利用して canopus HQ codec に変換したときの処理時間を計測したものである。

 “Canopus AVCHD converter ver.3.10”は、FIRECODER Blu を利用し、AVCHDファイルを MPEG-2 もしくは canopus HQ codec にエンコードが可能なアプリケーションである。


 また、FIRECODER Blu を複数枚同時に利用する事も可能であり、2枚以上の FIRECODER Blu で更なる高速エンコードを実現する。

 なお、AVCHD は 1440x1080 / 29.97i / 3.99 GB / 実時間65分51秒 というファイルを使い、canopus HQ codec 1440x1080 / 29.97i / 画質 Online(Fine) に変換している。


 以上のように、今回は AVCHD から HQ codec への変換時間には大きな差が生まれなかった。
 一つには、Core i7 が十分な演算能力を持っているということが挙げられる。
 SpursEngine の 浮動小数点演算処理能力は 48GFLOPSであるが、Core i7 に於いてもそれに拮抗するか上回る性能を発揮しており、H.264系(AVCHD)のデコードに関しては十分すぎるほどの高速処理が出来るようになってきた。

 見るべきポイントは、この場合はCPU使用率だろう。
 ソフトウェアエンコード時は、70%ほどの CPU使用率になっている。
 ここには補足が一つ必要だ。
 Core i7 は物理コアが4つのクアッドコアプロセッサで、さらに Hyper-Threading Technology を利用することで論理的に8コアのプロセッサを搭載するかのように振る舞う。
 Canopus AVCHD converter はマルチスレッディングに対応しているのだが、1つのファイルに対しては最高6コアしか利用されないようだ。
 そのため、この 70%というのは、2つのコア分を差し引いており6コアではほぼ100%を使っていると言っていいだろう。

 ちなみに、同時に2つ以上のファイルにエンコード処理を掛けると、全コアを使ったエンコードが始まり、使用率は全体で100%近くを推移する。

 一方、上記テストに於ける FIRECODER Blu 利用時は、30%以下で推移しており、エンコード中であってもシステム自体は、極めて安定して他のアプリケーションの動作も軽い。


 ところで、FIRECODER Blu の採用する SpursEngine は、H.264 もしくは MPEG-2 をトランスコードする専用のアクセラレータであるはずだ。
 しかし、Canopus AVCHD converter を用いた場合、そのいずれでもない canopus HQ codec への変換が可能である。
 これは、SpursEngine で AVCHD を一度高ビットレートの MPEG-2 に変換し、それからソフトウェアエンコードによって canopus HQ codec に再変換している為である。


 試しに同じファイルを FIRECODER Bluを使って HDV形式のファイルに変換してみたところ、CPU使用率は2%程度だった。

 FIRECODER Blu を使って、HQ codec に変換する場合は、30%程度の CPU利用が見られるが、これは MPEG-2 から HQ codec にソフトウェアエンコードする際の負荷なのだろう。
 尤も、MPEG-2 から HQ codec への変換に関しては、HDVの例を見れば Pentium D クラスのCPUでリアルタイム変換が可能であるので、Core i7 クラスとも成れば造作ない処理だ。

 高ビットレートとは言え、中間ファイルとして MPEG-2 に一旦変換している事は、画質への影響が気になるところだ。
 画質に関するテストは、別頁を設けて検証する予定だが、一見する範囲では目立った画質劣化は内容に見受けられる。

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テスト2;
 canopus HQ codec → H.264

 次は、反対に canopus HQ codec を H.264 形式にエンコードしてみる。
 このテストは、EDIUS Pro で編集した後、それを Blu-ray にオーサリングするために、H.264コーデックにエンコードするワークフローを想定したものだ。

 エンコードソフトには、SpursEngine 対応の“PEGASYS TMPGEnc 4.0 XPress + TMPGEnc Movie Plug-in SpursEngine”を使用した。



 テストファイルは、テスト1で出来た HQ codec ファイルを使った。
 すなわち、 canopus HQ codec 1440x1080 / 29.97i / 実時間65分51秒 / 55.0GB / 画質 Online(Fine) という仕様だ。

 H.264の設定は、1920x1080i / 29.97fps / VBR 35000kbps / AAC 96000Hz.1152kbits/sec という設定上限でフォーマットを作り、高負荷状態を想定。
 なお、現状 SpursEngineを利用したエンコード環境では 1pass エンコードのみサポートとなるので、ハード/ソフトエンコード共に 1passでの処理を行っている。


 テスト1の結果とは反対に、H.264へのエンコードには大きな差がついた。
 SpursEngineを利用したハードウェアエンコードでは、実時間を切る好成績を出したが、反対に Core i7 によるソフトウェアエンコードでは、従来通り長時間エンコード処理が必要となるようだ。
 流石に H.264コーデック回路を実装する SpursEngine が本領を発揮するところである。
 CPU使用率も30%以下で、これほどの重負荷処理を行っても、その他のパソコン上の操作には殆ど影響しないと言える。
 この辺りは、まさにハードウェアアクセラレータの面目躍如だろう。

 一方、Core i7 によるソフトウェアエンコード では、TMPGEnc 4.0 XPress の[ MPEG-4 AVC ]設定を利用しての処理としたが、処理進行率 30% の段階で既に 90分近くが経過た為に途中で処理を中断し、結果は推定で270分以上掛かると判断した。
 また、このソフトウェアエンコードテストでは、CPU使用率が50%を超えずマルチコアCPUとしての能力を発揮できないままであった。
 これは、おそらく搭載されている MPEG-4 AVC のエンコーダの仕様であるので、全コアを利用してエンコード処理を行える他のエンコーダがあれば、CPU使用率は改善出来るだろう。
 試しに他の .264系のエンコーダを利用した場合は CPU使用率100%となったので、処理速度アップの余地はある。
 ただし、その際利用した .264系エンコーダは、かなり細かなパラメータ設定が可能であり、その値によっては大きく処理速度が異なってしまう。
 FIRECODER Blu が行う H.264コーデックのパラメータの詳細は不明であるので、比較が単純には出来ない。
 その為、今回のテストではパラメータの平均値を取っていると思われるパラメータが TMPGEnc内の[ MPEG-4 AVC ]設定を利用して行った。


■予告

 今後のテスト予定:
  ・HQ codec から MPEG-2 へのエンコード
  ・FIRECODER Blu vs ソフトウェアエンコード 画質対決
  ・超解像技術の実力




 
>>> FIRECODER Blu 画質テスト



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