Canon XF605ファームウエアが更新され、Version 1.0.1.1 が公開された。
Version 1.0.1.1によるアップデートは以下の内容となる。
- キヤノンIP 「XCプロトコル」に対応しました。
- 4K映像を高効率に圧縮した、XF-AVC 4K Intra フォーマットを新規に追加しました。
- 縦撮り用の画面表示に対応しました。
- S&F設定時(24P-120P設定時)、顔検出、瞳検出、および追尾が可能になりました。
- オーディオメーターの4CH表示が可能になりました。
- アサインボタン11へのREC割り当てが可能になりました。
- 通常撮影とS&F撮影の切替え時に、記録設定を保持するよう修正しました。
- SDI出力信号のアンシラリ領域にファイル名データを追加しました。
- オーディオ設定の「CH2 INPUT」に 「内蔵マイク」、 「MIC端子」の選択肢を追加しました。
- 「常時記録」時にRECボタンを操作すると、稀にカメラが正常に動作しなくなる現象を修正しました。
この様に、新しい収録フォーマットが追加され、撮影収録機能の強化も行われている。
ラボの通常業務に対応する機能で気になるアップデートは
5.オーディオメーターの4CH表示が可能
6.アサインボタン11へのREC割り当てが可能
の2つの機能だ。
特に、アサインボタン11に録画機能(REC)を割り当てたいという要望は、PRONEWSでの初レビュー以来ずっと言い続けており、それが今回のアップデートで実現した形だ。初めて XF605を試用したのが昨年の8月なので実に一年越しの念願達成だ。https://www.pronews.jp/special/202110181500228856.html
興味深いことに、「REC」の割り当てはアサインボタン11の設定割り当てにしかその項目が現れない。他のアサインボタンではこの「REC」の選択肢は出て来ないのだ。確かに「アサインボタン11にRECを割り当てたい!」とは言ったが、全体のアサイン選択項目に「REC」を入れて欲しかっただけで、アサインボタンのどれに「REC」が割り当てられるようになっても良かったのだが……笑
もちろん私は、アサインボタン11に「REC」を割り当てるのみだが!笑
今回のアップデートの事を中の人が「宏哉さんファームです!笑」と冗談めかしておっしゃる所以である(爆
オーディオメーターの表示が4チャンネル分独立して可能になったのも嬉しい。今までは一応、音声の1~4チャンネル全てをオーディオレベルメーターに反映させることはできたのだが。CH1+CH3/CH2+CH4 の奇数CH/偶数CHをひとまとめにした表示だった。今回のアップデートで、全CHを個別に表示できるようになった。
その他には
9.オーディオ設定の「CH2 INPUT」に 「内蔵マイク」、 「MIC端子」の選択肢を追加
も気になる追加機能だ。
ただし、実際に設定してみると期待していた挙動とは少し違った。
従来はCH2 INPUT への入力ソースは INPUT 1 か INPUT 2 のみだった。つまり、XLR-INPUT 1と同じ音を収録するか XLR-INPUT 2 を使って別の入力系を活かすか、だった。
それが今回のアップデートでは、「内蔵マイク」と「MIC端子」が新しく選択肢に加わり、XLR-INPUT 1以外の選択肢として「XLR-INPUT 2 」「内蔵マイク」「MIC端子」が選べるようになったのだ。
ただし、CH2に「内蔵マイク」か「MIC端子」を選ぶには、CH3+CH4設定が「内蔵マイク」か「MIC端子」になっている必要があり、しかも CH3・CH4 が選んでいるのと同じ入力設定のみが選択肢に反映されるのだ。
つまり、CH3+CH4が「内蔵マイク」なら CH2も「内蔵マイク」の選択肢が現れ、CH3+CH4が「MIC端子」なら CH2も「MIC端子」の選択肢が現れるのだ。
これは、少し???が付いたアップデートだ。
例えばこの仕様だと、 CH1=XLR-INPUT 1/CH2=MIC端子/CH3+CH4=MIC端子……という事になる。
え? 3チャンネル分も同じ音を録ってどうするの?……と思うのだが。
アップデートの内容を読んだときは
CH1=XLR-INPUT 1/CH2=MIC端子/CH+CH4=内蔵マイク
という設定が可能な物だと想像しており、例えば CH2に Wireless Goを入力し、保険でCH+CH4=内蔵マイクを活かすなど…組み込める音声機材のバリエーションが増やせて音声プランがより柔軟になると思っていたのだが…。
CH3+CH4が「内蔵マイク」なら CH2は「MIC端子」/CH3+CH4が「MIC端子」なら CH2は「内蔵マイク」
という選択肢制限であれば納得がいくのだが、これはどう言う要望が現場からあったのだろうか?
やるなら
CH3+CH4が「内蔵マイク」なら CH2は「MIC端子」/CH3+CH4が「MIC端子」なら CH2は「内蔵マイク」
だと思うのだが、これは音声入力回路設計の限界なのだろうか……?
3.縦撮り用の画面表示に対応というのも面白い。当ラボの現在の業務では滅多に使うことの無い機能だが、昨今は DJIのドローン Mini 3 Proが縦向き撮影に対応するなど、スマホで動画を見ることを想定した機材設計が当たり前になってきた。実際当ラボでもデジタルサイネージ用にミラーレス一眼カメラで縦撮りロケを行ったことはある。
そうした需要をハンドヘルドカメラが汲み取って対応するのは興味深いし、今後の縦撮り案件の選択肢としてして、使い易いハンドヘルドビデオカメラが選べるのは有り難い。いや、滅多にない案件だけど…。
XF605の驚異的な画質追求の点では、4K 60p で遂にイントラフレーム収録を可能にしてしまったことだ。
従来であれば、「XF-AVC」の 3840×2160/4K 30p/410Mbps/イントラフレームが画質上限であり、4K 60p で録画するには 260Mbps Long GOP のインターフレームを選ぶ必要があった。
それが今回の Version 1.0.1.1 では、XF-AVC YCC422 10bit/3840×2160/4K 60p/600Mbps/イントラフレームが新たに追加された。4:2:2である! 10bitである!
ビットレートを600Mbpsに抑える事で SDXCカードでの記録を可能としている。
ちなみに収録フォーマットに関して言えば、テレビ向けの 1920×1080 59.94i というインターレース形式は、従来から用意されている XF-AVC内の選択肢から増えることは今回のアップデートでは無かった。これも「テレビロケをターゲットにするならビットレート低めの60iフォーマットをMP4に追加して欲しい」と当初から要望していた。
もっとも、 XF605を1年使用してみてテレビロケ用に設定している MP4 1080 60p 35Mbps のフォーマットで全く問題がないため、実用上は困っていない…というのが実際のところだ。つまり60i不要説。
ざっくりと、今回のバージョンアップを確認してみたが、私としてはアサインボタン11へのREC割り当てが可能が一番大きい。試しに、先日自作した「Zoom Cruiser」と併用して少し操作してみたが、劇的に操作動線が良くなりロケが効率的に行える事が体感できた。すなわち「フロントREC」と「自動スローズーム」の組み合わせは JVC GY-HM660でテレビロケを行っていた頃の高効率さを再度享受できるソリューションになることを確信している。
今週中にも XF605を使ったテレビロケがあるので、早速現場でその威力を確かめたいと思っている!
Canon XF605ファームウエア Version 1.0.1.1 ダウンロードページ
https://cweb.canon.jp/drv-upd/dv/xf605-firm.html