この1~2年、タイムコード・ラボでは、HOLLYLAND のワイヤレスインカムシステムを導入している。
2021年は同社 Mars T1000、2022年は SOLIDCOM C1、そして2023年は SOLIDCOM C1 Pro と導入を拡大している。
特に SOLIDCOM C1 シリーズは、音質も良く、ヘッドセットも軽量でバッテリーも長持ち。なによりもベースステーションを使わなくてもヘッドセットだけでコミュニケーションシステムが構築できる簡便さが素晴らしい。
この1年ほどは、イベント撮影やセミナー配信など複数人のスタッフで動く現場には必ず持って行っている。
多くの現場で活躍してくれている HOLLYLAND SOLIDCOM C1シリーズだが、使っていく中で苦手な現場も分かってきた。
それは、大音量の音楽が流れる現場だ。私の現場の場合、音楽ライブステージやヒップホップダンスイベントなどの撮影の現場がそれに該当する。
大音量が流れるうるさい現場であれば、ノイズキャンセル機能が搭載された SOLIDCOM C1 Pro があるじゃないか…と思われるかもしれないが、C1 Pro であっても全ての環境に対応できるわけではない。
音楽が爆音でPAされている現場だと「全く聞こえないわけでは無いが、聞き取れないときもある」というリターンが出先のカメラマンなどからはあがってきており、SOLIDCOM C1 Pro も万能では無いことが分かる。
まぁ、そもそも万能な機材というのはないわけで、環境に応じてグレードを使い分ける必要はあるのは当然だ。上位の HOLLYLAND SOLIDCOM M1 であればライブステージ撮影の現場などでも実績があるので、HOLLYLAND で揃えるならば、SOLIDCOM M1 は最強の選択肢だろう。
一方、当ラボではなかなか SOLIDCOM M1のような上位機種を必要とするような大規模な現場も無いため、できるだけシンプルに且つ安価にシステムを構築したいと思っている。
その選択肢の1つが SOLIDCOM C1シリーズであり、もう1つが10年前から使っているBluetoothインカムの B+comシリーズだ。このB+comを使ったインカムシステムは、当Next-Zero.com で2013年にレビューしている。
※http://next-zero.com/Lib/B-com/
なお、B+com というのは SYGNHOUSE製のバイクツーリング用のインカムシリーズのことだ。
製作当初は B+COM SB213.EVO を使っていたが、その後に新製品に更新し現在は B+com SB4X/Lite を使ったワイヤレスインカムセットに仕立てている。
音質は、SOLIDCOM C1 には及ばないが、ノイズキャンセル機能は強力で、ガンガンに音楽が鳴っているような現場でも問題なくコミュニケーションできる。
先日も生演奏の音楽ライブの配信を担当させていたいたが、リハーサルで SOLIDCOM C1 Pro を使ったところカメラマン達から「指示が聞き取れない」というリターンを受け、本番は B+com に切り替えて問題なく生配信を完遂した。
当ラボで製作しているB+com によるインカムシステムは DENON のステレオヘッドフォンを改造して、SB4X/Lite本体を取り付けている。しかし、この日のライブではカメラマンから「自分のイヤホンを使いたいので、首掛けにしたい」という要望があり、B+com附属のイヤフォン変換を使って、φ3.5プラグのイヤフォンが刺さるようにした。
ただし首掛けという点に関しては、ヘッドフォン部分はそのまま首に掛けて使うというスタイルになった。
以前から首掛けスタイルの必要性は感じており、また好みのイヤホンが使える方が良い現場もあることから、今回ようやく B+com のワイヤレスインカムシステムを首掛け仕様にすることにした。実に10年越しである…。
首掛けスタイルは以前から考えていたものの、問題はどうやって「首掛け」にするかだった。首回りにB+com を付けられるような「首掛けにできる何か」が必要だったのだ。
最初に思い付いたのが、ここ2~3年でよく見かける様になった”首掛けの扇風機”だ。これに B+com を取り付けた場合はどうなるか試してみた。
大変に雑ではあるが、このようにすれば使えるポジションにB+com本体が持ってこられることが確認できた。扇風機自体は肩の前でしっかりと安定しており、B+com 本体の重さで姿勢が崩れるような事も無かった。
が、首掛け扇風機では流石に無駄が多い。サイズ的に余計だし扇風機としての機能が重量増である。
ただ、コンセプトとして B+com を首掛けにするということは実現可能であると分かった。
次に考えたのが「ヘッドフォンの首掛け状態」を使って、ヘッドフォンのスピーカー部分を取り外してアームだけを使うという方法だ。Amazonを漁ってみるとアームがそこそこしっかりした 1000円以下のヘッドフォンが見つかり、これを購入して分解して首掛けに必要な部分だけ使おうと考えた。
……と、そんな買い物を実行に移そうとしたときに、Amazonのおすすめ欄に別のジャンルの商品を見出した。
「首掛けの作業ライト」である。早速商品ページに飛んでみると、これが実に B+com の首掛けスタイル向きの製品であることが分かった!
首掛けのアーム部分は必要最低限の大きさを満たしており、丁度B+com を取り付けるのに良さそうなサイズ感だ。作業ライトは磁石により脱着可能であるため、余計な改造や分解が不要。そして何よりも作業ライトはそのまま現場での設営・撤収時にも使える。製品本来の使い方と、こちらが求めている追加要素が無駄なく合致しているのだ。
早速 1つだけ購入して、取り付けテストをしてみると、予想通り上手く使えそうな事が確定。追加で3つ購入して合計4台分の首掛け仕様の準備をする。
次にイヤフォンだ。B+com SB4X/Lite の音声コネクタ部分は USB mini-B コネクタが採用されている。製品には純正品のヘルメット用スピーカーと”φ3.5変換アダプタ”が同梱されている。当ラボのヘッドフォン仕様では、この変換コネクタは使わずに、ヘッドフォン側の端子を USB mini-Bにモデファイしているのだが、今回もイヤフォンを USB mini-Bで直接差し込めように改造した。
なお、カメラマンなどが自分のイヤフォンで使いたい場合は、メーカ純正のUSB mini-B-φ3.5変換アダプタを使うことで対応できる。
さて、これらを組み合わせてできあがったのが、B+com SB4X/Lite による首掛けスタイルのワイヤレスインカムである!
実にシンプルである。首掛けアームとB+com SB4X/Lite はマジックテープで貼り付けてあるだけなので、取り外して従来のヘッドフォンスタイルにもできるコンパチブル仕様である。
B+com SB4X/Lite はインカムユニットのみで通話ができる。ベースステーションは不要なので、このインカムユニットを2つ以上現場に持って行けばコミュニケーションシステムを構築・確立できる。
首に掛けてみると、こんな感じ。鎖骨の上あたりで首掛けアームがしっかりと固定されているので、動き回っても B+com のユニットがズレたりすることも無さそうだ。
あと写真を撮り忘れてしまったが、この状態で本来の作業ライトも取付が可能なので、インカムをしたまま作業ライトで手元を照らしながら設営作業なども行える。(ライトが明るすぎるので、ブルーフィルムを貼るなどして舞台さんから怒られないようにした方が良いだろう)
HOLLYLAND SOLIDCOM C1 の導入で、もう出番が無いかと思っていた B+com SB4X/Lite によるワイヤレスインカムだが、現場によってはまだまだ活躍できそうで、10年前に自分で辿り着いた1つの答えがまだ生きているのは嬉しい。そして、今回の首掛け仕様への対応も満足のいく仕上がりになり、そのこともまた嬉しい。
なお、B+com SB4X/Lite は既に生産終了品だ。現行品は SB6Xシリーズで、こちらはUSB端子が Type-Cへとアップグレードされている。ただし USB Type-C から φ3.5プラグへの変換アダプタが存在せず、純正のヘルメット用スピーカー以外を利用する事を想定していない。これは SB6Xシリーズが高音質化のためにスピーカーの左右でグランドが分離された仕様になっており、一般的な両耳イヤフォンを使う為の変換アダプタを作るのが難しいためだ。
ただし、あくまでもSB6Xを介して音楽を聴くなどの想定での話なので、単純にインカムでの会話をするだけのモノラル仕様であれば変換アダプタを作るのは難しくない。
機能的にも通信音質的にも SB6Xシリーズは魅力的なので、今のSB4X/Liteの内蔵バッテリーがヘタってきたら更新を考えたい。
インカムシステムは特にマルチカム収録の現場で円滑に効率よく、そして確実にコミュニケーションを取っていく上で必須のアイテムだ。
B+com SB4X/Lite にもHOLLYLAND SOLIDCOM C1 /Pro にも得手不得手があるので、現場に応じて使い分けていきたいと思う。
※本日の推奨物欲