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While I am a little weary of having nothing to do...

Zoom Cruiser

タイムコード・ラボも夏休み中ということで、長期休暇期間恒例の松ケンとのラボ合宿を今年も行った。

今回の合宿では3つのガジェット&プログラムを制作。

ひとつずつ紹介していきたいと思う。

■Zoom Cruiser

まずは「Zoom Cruiser(ズームクルーザー)なるものを作った。

これは、Canon の 4Kハンドヘルドカメラ XF605 で、スローズームワークを半自動的に簡単に行うためのガジェット。

タイムコード・ラボの撮影業務内容としては情報番組のロケなども多くあり、商品や料理の接写撮影というシチュエーションは日常業務だ。

そんな接写撮影で多用するのが「スローズーム」だ。商品や料理の全景を”じんわり”とスローなズームで見せる。私が撮影時に必ず入れるカットである。

ただし、趣のあるスローズームができるかどうかはレンズ性能次第だ。ENGカメラの放送用ハンディーレンズの場合、ズームが動いているのかどうか分からないぐらいの超スローズームが可能で、大変に上質なスローズームが可能だ。

一方、ハンドヘルドカメラ……つまりデジの場合は、私が満足できるスローズーム性能を搭載しているカメラは少ない。特にSONY製のデジの場合は最新の PXW-Z280から業界標準機の HXR-NX5R まで最低速のズームの速度が速すぎて趣のあるズームができない。残念ながらどう頑張っても「高速スローズーム」になってしまうのだ…。

しかし、中にはスローズームがしっかりできるデジも存在し、そのひとつが JVC の GY-HM600シリーズである。HM600シリーズのズームシーソを使ったスローズームは立ち上がりも柔らかく、またスローズームの速度も大変にゆっくりとしている。

Canon の XF605 も同様で、ズームシーソーによるスローズームはレンズメーカーらしい上質の動作を行う。

JVC機もCanon機も甲乙付けがたいスローズーム性能を有しているのだが、接写時のスローズーム利用の場面では私はJVC機の方に優位性を見出している。その理由は「プリセットズーム」の存在だ。JVC機に搭載されている「プリセットズーム」機能は、ユーザーが指定した画角サイズまで任意の速度でズームを自動的に行える機能で、ユーザーボタンに割り当てて利用する。ズームスピードは128段階で設定でき、またズームの立ち上がり/立ち下がりにはイーズをつけることで、滑らかにズームの増速/減速が行える。

JVC GY-HM600シリーズ「プリセットズーム」設定画面
JVC GY-HM600シリーズ「プリセットズーム」設定画面

このプリセットズームは、本来任意の位置でズームが止まるようにするための機能だが、私は接写時にはこの「プリセットズーム」にテレ端を記憶させ、スピードを最低速の「1」に設定することで、ボタンひとつで自動的に超スローズームを行えるようにしている。途中でズームを止めたい時は、もう一度ボタンを押せば良い。

この「プリセットズーム」利用の最大のメリットは、ズーム中にカメラに触らなくて良いことだ。

スローズームは画面全体の動きが殆どないことから、僅かな揺れやブレが映像に出てしまう。デジのようにカメラ自体が軽く、また三脚も軽量なセットアップの場合、カメラマンの指がカメラに触れていることで、その僅かな振動が映像に現れてしまうのだ。特に、超スローを実現しようとズームシーソーの押し込みを微調整するような緊張する指使いの中では、余計な力が入ってしまい結果それが画面にブレとして現れて、格好悪い映像になってしまうこともある。

しかし「プリセットズーム」を使えば、一度ボタンを押してしまえばあとは自動でゆっくりとズームを進行してくれるので、止めたくなるまではカメラに触る必要がなくなり、ブレを心配する必要がなくなる。勿論、指からの振動の他にも歩行や足の踏み替えなどでも振動が三脚からカメラに伝わったりするので、スローズーム時のみならず接写中はカメラマン含め周りのスタッフは動かないのが鉄則だ。

さて、そうしたスローズームに便利なJVC機の「プリセットズーム」だが当然ながら Canon機には備わっていない。

そこで「ボタンワンプッシュでスローズームを勝手にやってくれるガジェット」を作ることにした。

仕組みは極めて単純。リモートコントロールプロトコルである LANC信号で、最低速のズームインコマンドを送るだけのリモコンユニットを作成するのだ。

ご存知のように LANC信号によるズームは、ズームイン8段階/ズームアウト8段階のコマンドが用意されており、例えば「ズームイン_6でズームせよ」とコマンドを送れば、カメラ毎に設定されている「LANCズームイン_6」の速度でズームインをはじめる。この時の速度はカメラによって違う。LANCズームデマンドはこの往復16段階のコマンドを連続的に送ることで、ズームデマンドレバー操作によるズーム動作を可能にしている。

今回作った「Zoom Cruiser」では、「ズームインの最低速度」で動作させるコマンドを出す様にプログラミングしてある。ユニットに備わっているボタンを押すとスローズームを開始し、もう一度ボタンを押すと停止する。ただそれだけのユニットである。

この「Zoom Cruiser」を使うことで、そのカメラの「LANC ズームインの最低速でのズームイン動作」を手放しで実現できる。

当然 LANCの規格上、最低速度のズーム速度はカメラによって異なる。Canon機は特にゆっくりとしたズームが可能だが、SONY機でこの「Zoom Cruiser」を使っても「高速スローズーム」が実行されるだけなので併用する意味は小さい。

ちなみに、JVC機の場合もLANCによるスローズームよりも、プリセットズームによる最低速の方がよりゆっくりとしたスローズームになるため、敢えて「Zoom Cruiser」を使う理由はないだろう。

「Zoom Cruiser」は LANCでも十分に低速なスローズームが可能で、かつプリセットズームのような自動ズーム機能が備わっていない Canon機で使ってこそ真価を発揮するのだ。

「Zoom Cruiser」は、いつものようにArduino を使って作成。三脚のパン棒に取り付けて利用するタイプのリモコンではなく、カメラ一体型とするために小型のユニットとして制作している。

※参考:http://next-zero.com/Lib/LANC-RemCon/

取付場所は、液晶モニター収納部の底面。レンズの上部だ。ユニットは十分に薄いので、私の場合はズームリングなどを操作しても指が干渉することはないが、手の大きい人だとレンズ上部の空間が少し手狭に感じるかも知れない。

電源はLANCから5Vが供給されるので、カメラの電源を入れれば自動的に「Zoom Cruiser」も起動する。あとは、XF605のズーム切替で「RING」から「ROCKER」にすれば、LANC制御が有効になり「Zoom Cruiser」が利用できるようになる。

さて「Zoom Cruiser」を使って、XF605でスローズームを行ってみる。実際の動画で確認して頂きたいのだが、実はXF605の設定でデジタルズーム項目のひとつの「アドバンスト30x」を有効にしたままサンプルを撮影してしまっているため、XF605で実現できる最低速のズームではないのだ……。申し訳ない。

計測したところ、XF605のLANCによる最低速ズームは広角端から望遠端まで約3分27秒かかる。これは、アドバンスト 30xが有効な30倍ズームも無効にした光学15倍ズームでも同じ時間だった。

つまり、30倍ズームも15倍ズームも約3分27秒掛けて広角端から望遠端までズームするので、それぞれの映像の遷移速度を比較した場合、15倍ズームの方がアドバンスト30xズームより2倍ゆっくりであることが分かるだろう。

光学15倍のみのLANCスローズームは後日あらためて撮影して掲載したい。

そんな設定ミスを踏まえた上であるのだが、XF605 のLANCスローズームは十分に低速である事が分かる

JVC GY-HM650 のプリセットズーム/スピード_1 の設定と比べても、XF605(アドバンスト30x有効)の方がゆっくりズームできるのだ。

私は長年、JVC GY-HM650 のプリセットズームのスローズームの速度で満足してきたので、正直なところ XF605 でアドバンスト30xが有効なままのスローズームでも納得いくだろう。

ちなみに、XF605(アドバンスト30x有効)のスローズームは、これが最低速というわけではなく、カメラ本体に備わっているハンドルズームロッカーの速度設定_1 でさらにゆっくりとしたズームが行える。最低速度をハンドルズームに設定しておけば、レバーの押し込みで最長で約4分38秒ものスローズームが可能になる。この最低速度はカメラ本体の大型ズームシーソであるグリップズームロッカーでも同じなのだが、ハンドルズームの場合はズーム速度は固定速度になるため、レバーの押し込み具合で速度が変化しないのがポイントだ。ハンドルズームを使うことで「Zoom Cruiser」を使わなくても、気軽にスローズームができる点は良い。ただし、カメラ(ズームシーソー)に指が触れ続けるという課題は残る。

「Zoom Cruiser」は、プログラミングでLANCコマンドが出すズームの速度を変更することは可能だが、現場でいちいちプログラムを変更するのは現実的ではない。複数ボタンをつけてボタン事に速度を変えるという設計も可能ではあるのだが……。

実は現状でも最低速度を変更する方法がある。それはXF605 のズーム速度設定自体を変更する事だ。XF605ではズームロッカーのスピード設定がLANCのスピードにも影響する。

ズームスピード設定にはロー/ノーマル/ハイがあり、それぞれの設定で最低速も変わってくる。

ロー対ノーマルで約2.3倍、ロー対ハイで約4.4倍ほどの最低速度差があるため、微調整はできないが「Zoom Cruiser」のズーム速度を変更することは可能だ。さらに、アドバンスト30xの有効/無効でも速度は変わってくるので、上手く組み合わせる事で、必要な速度に近づけることはできるだろう。

いずれにせよ、「Zoom Cruiser」はLANCコントロールなので、微妙な速度調整というとには向いていない。欲しい速度を得られない場合は従来通りズームロッカーを操作してズームを制御する必要があるだろう。

ということで、夏のラボ合宿の成果物その1は「Zoom Cruiser」という、半自動でスローズームを進行させるユニットの開発だった。

今回は「Zoom Cruiser」というお手製の外付けユニットで私の需要を解決したが、Canonには是非アップデートでJVC機の「プリセットズーム」のような機能を搭載して欲しい。Canon機のズーム系の性能は非常に高いので、さらに活用していくために機能が追加されるとデジのズーム性能としては無敵になりそうだ。

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